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オープニング
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オープニングタイトル

scene 01母人魚の思い
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人魚は、南のほうの海にばかりすんでいるのではありません。北の海にもすんでいたのであります。あるとき岩の上に、女の人魚が上がって休んでいました。その人魚は子どもをみごもっておりました。「わたしたちはもう長いあいだ、このさびしい、話をするものもない海の中でくらしてきたけれど、これから生まれる子どもに、こんなかなしい、たよりない思いはさせたくないものだ。人間はこの世界(せかい)のうちでいちばんやさしいものだと聞いている。人間がそだててくれたら、けっして無慈悲(むじひ)にすてることもあるまい。」人魚はそう思ったのでありました。〔語り:篠井英介(ささい・えいすけ)さん〕

scene 02ろうそく屋の年より夫婦(ふうふ)
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海岸(かいがん)に小さな町がありました。お宮(みや)のある山の下に、小さなろうそく屋(や)がありました。ある夜(よ)のことでありました。ろうそく屋のおばあさんはおじいさんに言いました。「このお山にお宮がなかったら、ろうそくが売れません。わたしたちがこうしてくらしているのも、みんな神様(かみさま)のおかげです。そう思ったついでに、お山へ上がっておまいりをしてきます。」お宮へおまいりをしておばあさんが山をおりてきますと、石段(いしだん)の下に赤んぼうがないていました。「おお、かわいそうに、かわいそうに。」

scene 03人魚の子
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その子は女の子であったのであります。そして、どうから下のほうは魚の形をしていましたので、おじいさんもおばあさんも、話に聞いている人魚にちがいないと思いました。「これは人間の子じゃあないが…。」「しかし、なんというやさしい、かわいらしい顔の女の子でありましょう。」「神様(かみさま)のおさずけなさった子どもだから大事(だいじ)にしてそだてよう。」子どもは大きくなるにつれて、黒目がちな、うつくしい、おとなしいりこうな子となりました。

scene 04絵をかいたろうそく
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むすめは大きくなりましたけれど、すがたがかわっているのではずかしがって顔を出しませんでした。おじいさんはせっせとろうそくを作り、むすめは自分の思いつきで、赤い絵具(えのぐ)で、白いろうそくに魚や貝や海草のようなものを上手にかきました。おじいさんはびっくりいたしました。だれでもその絵を見るとろうそくがほしくなるように、その絵にはふしぎな力とうつくしさとがこもっていたのであります。「絵をかいたろうそくをおくれ。」と、朝からばんまで、子どもや大人がこの店先へ買いにきました。

scene 05ふしぎなろうそく
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するとここにふしぎな話がありました。この絵をかいたろうそくを山の上のお宮(みや)にあげると、どんな大あらしの日でもけっして船がてんぷくしたり、おぼれて死(し)ぬようなさいなんがないと、いつからともなくみんなの口々にうわさとなってのぼりました。「ほんとうにありがたい神様(かみさま)だ。」けれどだれも、手のいたくなるのもがまんして、一心にろうそくに絵をかいているむすめのことを思う者(もの)はなかったのです。

scene 06香具師の悪(わる)だくみ
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あるとき、南のほうの国から香具師(やし)というあやしい男がやってきました。「大金を出すからその人魚を売ってはくれないか。」「むすめは神様(かみさま)のおさずけですから、どうして売ることができましょう。」「むかしから人魚は不吉(ふきつ)なものとしてある。今のうちに手もとからはなさないと、きっとわるいことがあるぞ。」年より夫婦(ふうふ)は、ついに香具師の言うことをしんじてしまい、つい金に心をうばわれて、むすめを売ることにきめてしまったのであります。「わたしはどんなにもはたらきますから、どうぞ知らない南の国へ売られていくことをゆるしてくださいまし…。」

scene 07売られた人魚
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月の明るいばんのことであります。いつかの香具師(やし)が、いよいよむすめをつれにきたのです。大きな鉄(てつ)ごうしのおりを車にのせてきました。「さあ、おまえは行くのだ!」むすめは、せきたてられるので、ろうそくをみんな赤くぬってしまいました。むすめは、赤いろうそくを自分のかなしい思い出の形見に二、三本のこして行ってしまったのです。

scene 08ろうそくを買いにきた女
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ほんとうにおだやかなばんでありました。トントン。「どなた?」すると、一人の色の白い女が戸口に立っていました。おばあさんはびっくりしました。女の長い黒いかみが、びっしょり水にぬれていたからであります。女はあのまっ赤なろうそくにじっと見入っていましたが、やがてぜにをはらって赤いろうそくをもって帰っていきました。

scene 09大あらし
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その夜(よ)のことであります。きゅうに空のもようがかわって、大あらしとなりました。ちょうど香具師(やし)が、むすめを船にのせて沖(おき)合いにあったころであります。「この大あらしでは、とてもあの船はたすかるまい…。」その夜、なんぱした船は数えきれないほどでありました。

scene 10赤いろうそく
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ふしぎなことに、赤いろうそくが山のお宮(みや)にともったばんは、どんなに天気がよくてもたちまち大あらしになりました。それから、赤いろうそくは不吉(ふきつ)ということになりました。しかし、だれがお宮にあげるものか、まいばん赤いろうそくがともりました。それを見ただけでも、その者(もの)はきっと海におぼれて死(し)んだのであります。もはやだれも、山のお宮に参詣(さんけい)する者がなくなりました。いく年もたたずして、その下の町はほろびてなくなってしまいました。

おはなしのくに
「赤いろうそくと人魚」 作:小川未明(語り:篠井英介)
人魚のお母さんは人間の優しさを信じて娘を蝋燭屋の老夫婦に託します。娘が絵を描いたろ蝋燭は評判になりますが…。日本のアンデルセン、小川未明の名作。

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