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オープニング
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オープニングタイトル

scene 01つるをたすけたわかもの
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むかし、あるところに、一人のわかものがおりました。わかものはまずしいひゃくしょうで、そまつないえに一人でくらしていました。あるあきの日、わかものは田んぼでのらしごとをしていました。すると、「バタバタ」という音がきこえました。「あれはなんの音だ?」そこには、一わのうつくしいつるがおりました。つるは、りょうしがしかけたわなにかかってくるしんでいたのです。「コー、コーコー。」「おお、かわいそうに。いたかったろう。」わなをはずしてやると、つるはまっ白なはねをのばして空にまいあがりました。「コー。」つるはうれしそうにひとこえなくと、山のかなたへとんでいきました。〔語り:壇蜜(だんみつ)さん〕

scene 02ゆきのよるにやってきたむすめ
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それからなんにちかたった、ゆきがちらつくばんのこと。わかものは一人さびしく、いろりの火にあたっていました。すると、いえのとをたたく音がします。そこには、いろの白いうつくしいむすめが立っていました。「このゆきの中、みちにまよってこまっております。どうかひとばん、とめてくださいませんか。」「こんなそまつないえでよければ、上がっておくれ。」わかものは、こころよくむすめをとめてやりました。

scene 03あなたさまのよめにしてください
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ところが、むすめはいっこうにかえろうとはしません。そして、はずかしそうにいいました。「あなたさまのよめにしてください。」「とんでもない。おれは、このとおりのびんぼうぐらし。とてもよめさまなどもらえたみぶんではない。」「びんぼうでも、かまいません。どうか、あなたさまのおそばにおいてください。」わかものはそんなむすめをいとおしくおもい、よめさまにすることにしました。よめさまは毎日(まいにち)よくはたらきました。一人ぐらしでさびしかったうちは、見ちがえるようにあかるくなりました。「おれは、しあわせものだ…。」

scene 04けっして中をのぞかないでください
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そんなある日。よめさまはわかものにいいました。「わたしに、はたをおらせてください。」そしてつづけていいました。「でもどうか、わたしがはたをおっているあいだは、けっして中をのぞかないでください。」わかものがけっしてのぞかないとやくそくをすると、よめさまは、なんどに入って、しょうじをしめてしまいました。「とんとん、からり、とんからりん。とんとん、からり、とんからりん。」はたおりの音は、三日三ばん、やむことはありませんでした。「とんとん、からり、とんからりん。とんとん、からり、とんからりん。」

scene 05かがやくようなうつくしいたんもの
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四日目のあさ、ようやくよめさまが出てきました。手にはかがやくようなうつくしいたんものをもっています。「これは…、なんときれいなたんものだ。」しかし、よめさまのかおは青白く、からだもやせて小さくなっていました。「つかれただろう。さあ、かゆをたいておいたから、おたべ。」よめさまは、「そのたんものを、おとのさまのところへもっていってください」といいました。「ああ、そうしよう。きっと、たかくかってくださるだろう。」

scene 06もう一たん、たんものを
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つぎの日。とのさまは、そのたんものをひと目見るなり、「おお、このようなうつくしいたんものは、見たことがない」と大よろこびし、すぐに千りょうでかってくれました。そして、「ぜひもう一たん、おってはもらえぬか」といいました。「しょうちしました。すぐにもう一たん、おもちいたしましょう。」わかものはこたえました。そうして、いえにかえったわかものは、よめさまにたのみました。「すまんが、なんとかもう一たん、たんものをおってはくれないか。」「それではおりましょう。でもどうか、わたしがはたをおっているあいだは、けっして中をのぞかないでください。」

scene 07どうして糸もないのにはたおりが?
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「とんとん、からり、とんからりん。とんとん、からり、とんからりん。」こんどは、三日たってもはたおりはおわりません。「とんとん、からり、とんからりん。」ふと、わかものはふしぎなことに気づきました。「どうしてあんなにみごとなたんものが、糸もないのにおれるのだろう?」でもわかものは、よめさまとのやくそくをやぶって中をのぞくことはできません。「どうしてだ、どうして…。」「とんとん、からり、とんからりん。とんとん、からり、とんからりん。」

scene 08よめさまのしょうたいは
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七日目になると、わかものはもういても立ってもいられなくなりました。とうとうわかものは、なんどのしょうじをそっとあけると、すきまから中をのぞきました。「あ…。」はたをおっていたのは、よめさまではなく、一わのうつくしいつるでした。つるは、そのながいくちばしで、からだからはねを一本ずつひきぬいては、それを糸にして、たんものをおっていたのです。「とんとん、からり、とんからりん。とんとん、からり、とんからりん。」よあけちかくなって、はたおりの音がとまりました。

scene 09つるとのわかれ
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なんどから出てきたよめさまがいいました。「見てしまったのですね。わたしは、いつかあなたさまにたすけていただいたつるです。でも、ほんとうのすがたを見られたからには、もうおそばにいることはできません。」よめさまは、あっというまに、うつくしいつるのすがたにかわりました。わかものは、ゆきののはらにつるをおいかけます。「たのむ! いかないでくれ! いかないでくれ!」「コォー。」つるはかなしそうにひとこえなくと、あさやけの空にきえていきました。

おはなしのくに
つるのおんがえし
“はたを織るところは決して見ないでください”【作者】日本の昔話 【語り】壇蜜