オープニングタイトル
王さまに、──なにがいちばんすきですか?──ときいたら、「たまご。」とこたえました。「たまごやきがいちばんうまいよ。♪あまくって ふうわりした あったかいのが いいね♪」。王さまは、あさも、ひるも、よるも、いつもたまごやきをたべていたんだそうです。〔語り:パパイヤ鈴木(パパイヤ・すずき)さん〕
王さまのうちに、あかちゃんがうまれました。まるまるとふとった、たまごのようにかわいらしい王子さまでした。王さまは すっかりよろこんで、だいじんのワンさんをよんでいいました。「おいわいをしよう。くにじゅうの人たちを おしろにあつめて、うんとごちそうをしてあげよう」。だいじんは「ごちそうは、なににしましょうか、王さま」といいました。王さまは、「ごちそうは、たまごやきにきまっているさ。♪あまくって ふうわりした あったかいのが いいね♪」といいました。
が、たいへんです。くにじゅうの人があつまるんですから、たまごは いくつあっても たりません。なん百(びゃく)、なん千(ぜん)もいるのです。だいじんは、いいました。「ほかのごちそうで、まにあわせましょう」。王さまは これをきいて、おこってしまいました。「いや、いかん。ぜったいにたまごやきだ。たまごやきでなかったら、おいわいはやめだ」。だいじんが こまっていると、こんなことをいうのです。「ぞうのたまごをもってくればいいではないか。ぞうのたまごなら、大きいからいいよ。♪あまくって ふうわりした あったかいのが みんなでたべられるよ♪」。
ワンだいじんは、ポンと手をうって いいました。「ほほう、なるほど。ぞうのたまごなら大きいでしょうね。では、すぐ けらいにいって、ぞうのたまごを七つか、八つ、みつけてこさせましょう」。だいじんのいうことをきいて、王さまは、ふとったからだを ゆすぶって、にこにこしました。「♪なるべくはやく おいわいだ♪」。
だいじんのワンさんは、さっそくけらいをあつめていいました。「王子さまが うまれたおいわいに、くにじゅうの人たちをおしろにあつめて、みんなに たまごやきをごちそうすることになった。そこで、ぞうのたまごを みつけてこい。七つか八つ、さがしてこい」。♪プルルップ トロロット タララップ ターーーッ♪ ラッパがなって、しゅっぱつです。へいたいたちは、うたいながらすすみました。「♪ぞう ぞう ぞう たまごをうんだぞう たまごをだいてるぞう はやく でてこい ぞう♪」。
ワンだいじんは、おおぜいのへいたいを つれて、大きなもりへやってきました。ぼうえんきょうには、まだ、ぞうが みえてきません。木とくさのほかに、なにも みえないのでした。「みんな、いちどに、ピストルを そらにむけて うつんだ。いいか、一、二、三……。」ダ ダーン! すると、どうぶつたちが びっくりして、にげだしました。りす、しか、だちょう、カンガルー、しまうま、らくだ、とら、ライオン、ひょう……。へびや とかげも、すばやく にげていきます。ぼうえんきょうを のぞいていた ワンだいじんは、「あっ、いた、いたっ。ぞうが いたぞ。ずっと むこうを、のっし のっしと にげていく。さあ、みんな、すすめっ、すすめっ」。
ぞうの にげたあたりに くると、そこに にげおくれた 子ぞうが、いっとう。「おっ、子ぞうだ。たまごから かえったばかりらしい。まだ かえっていない たまごも あるはずだ。さがせ、さがせっ!」。さがしました。くさむらの中も、いわのかげも、ほらあなも、みんなさがしました。なかには、木の上を さがしたり、つちをほって さがす へいたいもいました。ところで、たまごは あったでしょうか。ありました、ありました。へいたいたちは、手に手に たくさんたまごをもって、かえってきました。が、みんな、手にもてるほど 小さなたまごなんです。どうもおかしい。ぞうのたまごは、そんな小さなはずはありません。ワンだいじんは、おこってしまいました。「そんな 小さいんじゃ、だめだっ!」。
へいたいたちは びっくりして、手にもったたまごを、下におとしてしまいました。「あっ!」。おとしたたまごが ぱっ とわれて、中から ピヨピヨ ピーピー ひよこが でてきたのです。ことりのひよこ、だちょうのひな。あれあれ、へびのあかちゃんやカメのあかちゃんも います。ひよこや あかちゃんが、ちょこちょこ あるき出したのをみて、どこにいたのか、さっきの子ぞうが でてきました。ワンだいじんは いいました。「これだけさがしても、ぞうのたまごはなかった。しかたない。この子ぞうをつれて、おしろへ かえろう」。
「♪ぞう ぞう ぞう たまごをうんだぞう たまごをだいてるぞう どこにもいないぞう みつからなかった ぞう♪」。はじめのうちは、へいたいたちも、そんなうたを うたっていましたが、だんだん つかれてきました。ワンだいじんも、とうとう トラックの上で、ねむってしまいました。ねむったワンさんは、ゆめをみました。ゆめの中に、子どもが でてきました。子どもは、くすっと わらってから、こんなうたをうたうのでした。「♪ぞうがたまごをうむなんて ぼくらはきいたこともない うまれた ときから うまれた ときから 小さなかわいいあかんぼう ぞうはたまごをうまないよ♪」。
ワンだいじんは、はっとして 目をさましました。「あっ、そうか。ぞうはたまごをうむ どうぶつじゃなかったな。たまごをうむのは、ことりや、だちょうや、へびだけか」。
そうです。ぞうは たまごを うみません。みんな、どうして はやく きがつかなかったんでしょう。王さまも、だいじんも、そして、おおぜいのへいたいたちも、みんな きがつかなかったのです。 あっはははは……
でも、だいじんのワンさんが つれてかえった 子ぞうは、いつもかわいらしい目を ぱちぱちさせていました。そして、王子さまが 大きくなったとき、すっかり なかよしになって、うまのように のってあるいたそうです。