オープニングタイトル
むかしむかし、あるところに、正直者(しょうじきもの)のじいさまがおりました。ある冬(ふゆ)の日、じいさまはすてられていた白い子犬を見つけました。「おうおう、かわいそうに。さむかったろう。」「クゥ~。」じいさまは、子犬をふところに入れてつれてかえりました。ばあさまもたいそうよろこび、子どものいない二人は、シロと名づけてだいじにそだてました。シロは、じいさまが畑(はたけ)にいくとついていき、土をほったりたねまきをしたりして、畑しごとを手つだいました。「ワンワン。」「よしよし。ほんにシロはめんこいのう。神(かみ)さまがさずけてくださった子どものようじゃ。」〔語り:平田満(ひらた・みつる)さん〕
そんなある日のこと。シロは畑(はたけ)のすみで、いつもとはちがうようすでほえ立てました。「ワンワン。ワンワン。」じいさまが「シロ、どうしたんじゃ」ときくと、「ココホレ、ワンワン。ココホレ、ワンワン」といっているようです。「うん? ここをほれというんか? よしよし、わかった。」いわれたとおり、じいさまはそこをほりました。「よいしょ。よいしょ。よいしょ。よいしょ。」するとどうでしょう。「おお! なんということじゃ…。」畑から、大ばん小ばんが、ざっくざっくと出てきたではありませんか。
そのようすを見ていたのが、となりのよくばりなじいさまです。「ほほう…。」よくばりじいさまは、むりやりシロをひっぱりだしました。「おいこら、大ばん小ばんはどこじゃ? はやくおしえろ!」しかしシロはいっこうに返事(へんじ)をせず、畑(はたけ)のすみにすわりこみました。「おお、ここか。よーし!」よくばりじいさまは、いそいで畑をほりかえしました。するとどうでしょう。「ひっ、ひっ、ひゃーっ!」出るわ出るわ。われたちゃわんやら、牛(うし)のふんやら、ヘビやらムカデやら…。「だましたな。このうそつき犬め!」「キャイーン。」じいさまは、シロをなぐりころしてしまいました。
「なんとむごいことを…。」正直者(しょうじきもの)のじいさまは、しんでしまったシロを庭(にわ)にていねいにほうむりました。そして目じるしに、一本のまつの木をうえました。「シロや、すまないことをしたなぁ。ゆるしておくれ。」じいさまがうえたまつの木は、おどろいたことに、見る見る大きくなりました。「こりゃあ、たまげた! シロの形見(かたみ)とおもって、この木でうすをこしらえよう。」
そのうすで、じいさまとばあさまは、もちをつくことにしました。「よいしょ。よいしょ。よいしょ。よいしょ…。」ぺったん、ぺったん…。するとどうでしょう。「な、な、なんと!」うすから、大ばん小ばんが、ざっくざっくと出てきたではありませんか。じいさまもばあさまも、これまたびっくりぎょうてん。
そのようすを、また、となりのじいさまが見ていました。「ほほう…。」むりやりうすをかりてかえると、力まかせにもちをつきました。「よいしょ。よいしょ。よいしょ。よいしょ…。」べったん、べったん…。すると、「う、うわ。なんじゃ、こりゃあ!」くさったやさいに、くさった肉(にく)や魚(さかな)。鼻(はな)がまがってしまいそうなほどくさくてたまりません。おこったじいさまは、庭(にわ)でうすをもやしてしまいました。
それをきいた正直者(しょうじきもの)のじいさまは、もやされたうすのはいをかきあつめました。「シロのおもいでじゃ。せめて、このはいだけでも大切(たいせつ)にしよう」。そのときです。サアーッ。風(かぜ)がはいを空たかくまいあげました。すると、あらふしぎ! はいがかかったかれ木に、つぎつぎと花がさいたではありませんか。「こりゃ、たまげた! シロが花をさかせてくれた!」
じいさまはうれしくなって、かれ木にのぼると、はいをつかみました。「かれ木に花をさかせましょう! かれ木に花をさかせましょう! かれ木に花をさかせましょう! おお、さいた、さいた!」じいさまがはいをまくと、かれ木があっというまに花ざかり。ちょうどそのとき、とのさまのぎょうれつがとおりかかりました。「おお、あっぱれじゃ! まことにみごとな花ざかりじゃ! 日本一のはなさかじいにほうびをとらせよ!」じいさまはとのさまから、たくさんのほうびをもらいました。「ありがとうございます。これもシロのおかげじゃ…。」
「ほほう…。」となりのじいさまも、いそいでのこったはいをかきあつめ、かれ木にのぼりました。そして、ここぞとばかりに、どかっとはいをつかむと…。「かれ木に花をさかせましょう! かれ木に花をさかせましょう! かれ木に花をさかせましょう!」ところが、花がさくどころか、あたり一面(いちめん)はいだらけ。そのはいが、とのさまやけらいたちの目や鼻(はな)に入って大さわぎ。「ゴホゴホゴホ。ぶれいもの! このはいまきじじいをとらえろ!」「も、も、もうしわけございません! おゆるしください!」とのさまにきつくおしおきをされたよくばりじいさまは、なくなくかえっていったそうな。