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オープニング
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(オープニングタイトル)

scene 01宮廷を舞台にした歴史物語
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平安時代を舞台にした歴史物語、『大鏡』。宮廷での熾烈(しれつ)な権力争いを、天皇や貴族のさまざまなエピソードを交えて描き出しています。万寿(まんじゅ)二年(1025)、雲林院(うりんいん)というお寺の場面から『大鏡』は始まります。「先(さい)つ頃、雲林院の菩提講に詣でてはべりしかば、例人よりはこよなう年老い、うたてげなる翁(おきな)二人、嫗(おうな)といきあひて、同じ所に居ぬめり」。菩提講という、念仏などを唱える会。集まった人々の中に、ひどく年をとった3人の老人がいました。

scene 02190歳の老人の語り
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その中の一人は、190歳の大宅世継(おおやけのよつぎ)。古い知り合いと再会し、昔話に花を咲かせます。「年頃、昔の人に対面(たいめ)して、いかで世の中の見聞くことをも聞こえあはせむ、このただ今の入道殿下の御有様をも申しあはせばやと思ふに、あはれにうれしくも会ひ申したるかな」――長年、昔の知り合いと会って、世の中で見聞きすること、今の入道殿下のご様子について語り合いたいものだと思っていましたが、まあ嬉しくもお会いしたものですねえ。

scene 03時の最高権力者、藤原道長
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世継が話していた「入道殿下」とは、藤原道長のことです。道長は、摂政、太政大臣をつとめ、平安時代、貴族として最高の権力を手にしていました。道長は、娘たちを次々に天皇の后(きさき)にし、その子、つまり道長の孫が天皇となります。皇室との結びつきを強めることによって、道長は異例の出世を遂げたのでした。

scene 04道長の魅力を伝えるエピソード
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世継は道長を称えるエピソードを次々と語り、周りの人々を話に引き込んでいきます。道長が20代半ばだった頃、一足先に出世していた年下のライバル、藤原伊周(これちか)がいました。ある時道長は、伊周が主催する弓の試合に飛び入り参加し、あっという間に勝ちを決めます。ところが、負けた伊周側は試合の延長を提案してきました。内心ムッとする道長。しかし、弓を構えながら言い放ちます。「道長が家より帝・后立ちたまふべきものならば、この矢あたれ」――道長の一族から帝や后になる者が現れるのなら、この矢よ当たれ!

scene 05ライバルに圧勝する道長
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すると道長の放った矢は、「同じものを中心(なから)にはあたるものかは」――同じ当たるのでも、的のど真ん中に当たったのです。動揺した伊周は手元が狂い、矢はとんでもない方向へ。続いて2本目。さらに道長は追い打ちをかけます。「摂政・関白すべきものならば、この矢あたれ」――この私が摂政・関白になる運命なら、この矢よ当たれ! そう言うと、再び矢は真ん中へ。道長の圧勝でした。

scene 06女性を味方につける道長
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世継は、さらに道長のエピソードを続けます。道長には、ここぞという局面で味方につく女性が現れるのです。その一人が、道長の姉、詮子(せんし)です。ある時、道長に出世のチャンスがめぐってきました。ところが当時の一条天皇は、道長のライバル伊周を用いようと思っていました。詮子はその一条天皇の母親です。詮子は、一条天皇が寝る部屋にまで押しかけ、道長を選ぶよう涙を流して説得しました。

scene 07天皇を説得してくれた姉
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詮子の戻りを待つ道長。もうだめか、そう思いかけていたところに、ようやく詮子が帰ってきます。「御顔は赤み濡れつやめかせたまひながら、御口はこころよく笑ませたまひて、」――詮子様のお顔は赤らみ、涙にぬれていましたが、口元は嬉しそうに微笑んで、「『あはや、宣旨下りぬ』とこそ申させたまひけれ」――ああ、やっと帝のご命令が下りましたと、おっしゃられたのでした。

scene 08道長を描くさまざまな視点
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『大鏡』は、世継を語り手にすることによって、道長の魅力を豊かに描きだそうとしています。また、道長のほかの一面にも迫ろうと、さまざまな工夫をしています。敦明(あつあきら)親王のエピソードを語る場面です。当時、敦明親王は、道長の直接の親戚ではなかったものの、東宮(とうぐう)、つまり次の帝(みかど)という立場にありました。しかし突然その地位を退いてしまいます。世継は、気ままな生活に戻りたかったんだろう、と説明します。そこへ、話を聞いていた若い侍が口を挟みます。

scene 09権力を握るための陰謀説
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「このほどの御ことどもこそ、ことのほかに変はりてはべれ。なにがしは、いとくはしくうけたまはることはべるものを」――この件については、ずいぶん違う話を、私はとても詳しく聞き及んでおります。こう言う侍に、世継はこのように答えます。「さもはべるらむ。伝はりぬることは、いでいでうけたまはらばや」――そういうこともありましょう、ぜひとも聞かせていただきたいものです。侍は、すべては道長の陰謀によるものだと話します。道長は、自分の孫を東宮にしたかったのです。

scene 10道長の冷酷でしたたかな一面
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そして、敦明親王の身内の女性がくやしさに震える姿を見て、道長はこう言ったといいます。「あはれにも、またをかしうも」――かわいそうだったけれど、滑稽でもあったよ。道長には冷酷でしたたかな一面もあったのです。

scene 11歴史の多面性という面白さ
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視点や立場によって、さまざまな見方ができる歴史。その面白さを、『大鏡』はあますところなく描き出しています。雲林院で繰り広げられていた、世継の昔語り。しかし、菩提講が始まり、話は中断します。そして、ちょっとした騒ぎにまぎれて、老人たちは、どこへともなく消え失せてしまいます。

10min.ボックス  古文・漢文
大鏡
史実を元に物語性をもたせて書かれた歴史物語。藤原道長の栄華の裏表を、対話形式で力強く描く。同じ平安時代が舞台でも「枕草子」「源氏物語」とは趣が違う文章を味わう。
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平安時代歴史物語藤原道長

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