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文楽「駆け込み訴え」
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申(もう)し上(あ)げます。申(もう)し上(あ)げます。旦那(だんな)さま。
あの人(ひと)は、酷(ひど)い。酷(ひど)い。
はい。厭(いや)な奴(やつ)です 悪(わる)い人(ひと)です。
ああ、我慢(がまん)ならない。
【文楽解説】
人形浄瑠璃文楽は、物語を語る太夫と、情景を演奏する三味線ひきと、人形遣いとで演じる伝統芸能です。三味線伴奏の語り物音楽のことを、浄瑠璃といいます。
【「駆け込み訴え」解説】
小説家太宰治の昭和初期の短編。「酷い」という言葉で怒りを表しながらも、信頼していた人に突き放された悔しさや悲しみなどのゆれる心を、三味線と太夫の語りで巧みに表現しています。美しい女性が、一瞬にして恐ろしい表情に変わる「ガブ」と呼ばれるからくりが、人形浄瑠璃ならではの見どころです。原作では男性の台詞ですが、感情が変化していく様を表現するため、ガブ(女性)の人形に置き換えて演じて頂きました。