チャプターあらすじを読む
scene 01だいじなお皿をかたづけているお菊
ないようを読む

江戸(えど)、番町(ばんちょう)の、あるさむらいの家(いえ)の台所(だいどころ)では、女中のお菊(きく)が、うたげのあとの皿(さら)をかたづけております。れいこくな主人(しゅじん)とおくがたにしかられないように、お菊はいつもおずおずはたらいていました。ことにこの南京皿(なんきんざら)は、主人じまんのだいじなお皿でしたから、お菊はいつにもましてていねいに、一まい一まい、ぬぐっております。〔語り:山本美月(やまもと・みづき)〕

scene 02お皿が一まいわれてしまった!
ないようを読む

このお皿(さら)は、ぜんぶで十まい。赤や青のもようが一面(いちめん)にちりばめられた、それはそれはうつくしいお皿でした。でも、今日(きょう)はうたげのしたくのために、朝(あさ)早くからはたらいていました。お菊はもうつかれてねむたくて、つい、うとうと…。「はっ、いけないいけない。お皿をわったらたいへんだ」。そんなさなか、まどからぬるりと入りこんだものがおりました。「ニャーオ」。お菊はあわてて、「しっしっ」とおいはらおうとして、「あ!」。ガチャーン! お皿が一まい、われてしまったのです。

scene 03お菊のかみをつかんでひきずって
ないようを読む

「どうしよう…」。われた音をききつけて、女中たちがかけつけてきます。バタバタバタ。「あっ、これはたいへんなことを…」。女中たちもことばをうしないました。「あの、わたし…、あの…」。そこへ、「どうしたんだい」。やってきたのはおくがたでした。「はっ、おまえ、なんてことを…」。おくがたは、われたお皿(さら)を見るなり、お菊のかみをむんずとつかんでひっぱりました。「このふとどきもの、よくも皿をわってくれた」。おくがたはお菊をつかんで主人(しゅじん)のところまでひきずっていきます。

scene 04「おゆるしください…おゆるしください…」
ないようを読む

「たいへんなことでございます。あの十まいそろいの南京皿(なんきんざら)が、一まいたりなくなりました」とおくがたは主人(しゅじん)にいいました。「なに? 一まいたりない?」。「はい、このお菊が一まいわったのです」。「おゆるしください…」。「ゆるさん! お菊、かくごしろ!」。「ああ! おゆるしください…おゆるしください…」。主人とおくがたはずいぶんながいあいだお菊をいたぶって、そして、くらい納戸(なんど)におしこめてしまったのでした。

scene 05お菊は井戸に身をなげて…
ないようを読む

つぎの日。女中がお菊のようすを見にいくと、そこにお菊のすがたはありません。家(いえ)じゅうの者(もの)がお菊をほうぼうさがし、やがて、庭(にわ)の古井戸(ふるいど)のそばで、ぼろぼろの小さなぞうりだけが見つかりました。納戸(なんど)をぬけだしたお菊は、井戸に身(み)をなげてしんでしまったのです。主人(しゅじん)は、お菊は病気(びょうき)でしんだととどけを出しました。のこったお皿(さら)も納戸のおくにしまいこまれました。そうして、主人もおくがたも女中たちも、だんだんお菊のことはおもいださなくなりました。

scene 06まいばん井戸からお菊の声が
ないようを読む

ある日のことです。おくがたは、自分(じぶん)の首(くび)すじにきみょうなもようがあることに気がつきました。おくがたにはそれがあの南京皿(なんきんざら)のもように見えて、ぞっとしました。「これはもしや、お菊のたたり…」。そのばんからです。庭(にわ)の古井戸(ふるいど)から、お菊の声(こえ)がきこえてくるようになりました。「いちまーい、にまーい、さんまーい…」。その声は皿をかぞえるように、一まい、二まい、とかぞえすすめ、「はちまーい、きゅうまーい」。九まいまでくると、「ああ、ううう…」。十はいわず、しばらくするとまた、「いちまーい、にまーい…」とかぞえはじめるのでした。

scene 07おくがたも主人もしんでしまった
ないようを読む

お菊の声(こえ)は、まいばんよふけをすぎるときこえてきて、明け方(あけがた)までつづきます。それは身(み)の毛(け)がよだつほどおそろしく、でも、やしきのどこにいっても、耳をふさいでも、その声からのがれることはできません。「あ、ああ、うう…」。こんなばんがつづき、おくがたは病気(びょうき)になりました。たかいねつが出て、七日七ばんもだえくるしんだすえに、とうとうしんでしまいました。女中たちはやしきをつぎつぎにさっていき、のこった主人(しゅじん)もやがて、おくがたのあとをおうようにしんでしまったということです。

scene 08「いちまーい、にまーい…」
ないようを読む

けれども、毎夜(まいよ)お菊が皿(さら)をかぞえる声(こえ)はやまなかったのです。「いちまーい、にまーい、さんまーい、よんまーい、ごまーい、ろくまーい、ななまーい、はちまーい、きゅうまーい…。ああっ、ううっうう…」。そしてまた、「いちまーい、にまーい…」。

おはなしのくに
【コワイオハナシノクニ】皿(さら)やしき
主人の大事な皿を割ってしまい、井戸に身を投げたお菊。すると夜な夜な井戸の中から恐ろしい声が…【語り:山本美月】

クリップ

教材きょうざい資料しりょう

教材・資料(先生向け)

配信はいしんリスト

今年度こんねんど放送ほうそう

その放送ほうそう