オープニングタイトル
文字や絵が送られてくるファクシミリ。どうやって送られてくるのでしょう。大学生に聞いてみると、「細かい点で表すことで見えてきます」という答え。「細かい点」とは何でしょう。「ア」という文字を顕微鏡(けんびきょう)で見ると、たしかに、細かい点が集まっているのが見えました。「ファクシミリは、文字や形を細かいドット(点)に分解(ぶんかい)して遠いところに送り、それを再現(さいげん)して、文字や形をもう一度作り直すという原理です」(神奈川工科大学 小宮一三教授)。
ドットに分解(ぶんかい)するしくみを見てみましょう。たとえば「a」という文字を、たて6つ、よこ5つのマス目に分けます。いちばん上の列には左から白のマスが1コ、黒のマスが3コ、白のマスが1コあるので、これを「1,3,1」と数字に置きかえます。同じように2列目は「4,1」、3列目は「1,4」。4列目のように左はしが黒の場合は最初に「0」を置いて「0,1,3,1」とし、5列目も同じく「0,1,3,1」、6列目は「1,4」となります。細かく区切ることで、「a」という文字が数字に置きかえられました。
今度は逆(ぎゃく)に、数を文字や形にできるかどうか、大学生のみなさんにやってもらいました。正解(せいかい)とくらべると、「コーヒーカップの形」。合っていました。別の人は「ハートのマーク」。これも合っていました。数から、もとの図形と同じ形をあらわすことができました。「数字というのは世界共通なので、すごく便利だと思います」(大学生)。
たまご舞踊団(ぶようだん)が、「1,1,1」、「0,1,1,1」、「1,1,1」という数を形にしてみます。「1,1,1」は、「白、黒、白」。「0,1,1,1」は、左はしが黒なので「黒、白、黒」。3列目の「1,1,1」は「白、黒、白」となりました。完成です。今度は数字がもっとたくさんならんでいて、複雑(ふくざつ)な形のようです。この数が表すようにたまご舞踊団が白と黒でならんでいくと…、ひよこのような形になりました。成功です!
では、この数字は何をあらわしているのでしょう。「2.5Y 6.7/8.7」、「2.8YR 4.7/10.3」、「6.0GY 2.2/4.3」、「5.0R 2.1/7.1」。実はこの数字は、色を表しています。どうすれば色が数字になるのか、専門家(せんもんか)の田邉(たなべ)学さんに聞いて見ました。「すべての色は、色あい、明るさ、あざやかさの組み合せで表すことができます」。色合いとは、色の種類のこと。100種類の色に分けられていて、それぞれの色はアルファベットと数字の組み合わせで区別されています。
その一つひとつの色が、明るさとあざやかさによって、さらに細かく分かれています。たとえば「5R」で表される赤い色をさらに明るさとあざやかさで分けた図(カラーチャート)をみると、たての列が明るさを表し、数字が大きくなると明るくなります。一方、よこの列はあざやかさをあらわし、数字が大きくなると、あざやかな色になります。色合い、明るさ、あざやかさ。この3つの数字を組み合わせると、色が数で表せるのです。
実際(じっさい)にカキの色をはかってみましょう。使うのは、色をはかる「色彩(しきさい)計」というコンピュータです。結果は「色合い2.8YR 明るさ4.7 あざやかさ10.3」となりました。これがカキの色を表しています。チャートでたしかめてみると、カキの色の場所がわかります。色が数で表せたのです。
「色を数値化(すうちか)することによって、実際(じっさい)に色がなくても、正確(せいかく)に伝えることができます」(田邉さん)。実は田邉さんは、街にある道路や看板(かんばん)などの色を調べる仕事をしています。街にある建物や看板の色を、数で記録します。その数を使って、街の景色をきれいに整えるのです。
気候も数で表すことができます。暑い夏、2007年8月16日。東京は最高気温37度、湿度(しつど)58%でした。天気予報(よほう)などを提供(ていきょう)する会社では、むし暑さを数値化(すうちか)した「不快指数(ふかいしすう)」というものを出しているそうです。不快指数とは、その日の気温と湿度を使って求められる数値で、「0.81×気温+0.01×湿度×(0.99×気温-14.3)+46.3=不快指数」となります。2007年8月16日の気温と湿度を式にあてはめて計算すると、不快指数は「89.2」となりました。
この不快指数(ふかいしすう)はどんな数なのか表で見てみると、「89.2」というのは、「暑くてたまらない」という数でした。この日はとてもむし暑い日、ということがわかります。では、春はどうでしょう。2007年4月22日、最高気温22度、湿度(しつど)65%。この日の不快指数を計算してみると、「69」です。これを表で見てみると、「快(こころよ)い」という数字。数で表すと、すごしやすさもわかってくるのです。