チャプターあらすじを読む
オープニング
ないようを読む

(オープニングタイトル)

scene 01中学校の入学面接
ないようを読む

「小学校よりずっと大きい」。中学校の校舎を見て少し不安になるハナ。ママといっしょに入学面接に来た。「だいじょうぶ?」とママ。「よし、行こう」。校舎に向かって歩き出す。廊下(ろうか)で待っていると、「すみませんお待たせして。グエンです」と男の人がやってきた。「君がハナだね」。グエン校長だ。校長室でママもいっしょに面接を受ける。「どこの中学に行くのか気になってる?」とグエン校長。「とっても」。「ではもったいつけずに。君は我が校の新1年生だ」。「ありがとうございます」。よかった。ホッとした。「登録名は法律上の“トーマス”ですが、日常的な書類はすべて“ハナ”です」とグエン校長が言った。

scene 02「じゃあ、女子トイレも使えますか?」
ないようを読む

「トランスジェンダーの生徒をどうサポートするのか職員が研修する機会も設けます。だれもがわけへだてなく安全に学べる場にしたいのです」とグエン校長。いちばん心配なことをたずねた。「じゃあ、女子トイレも使えますか?」。でも、「いや…すぐにはまだ。当面は保健室の『だれでもトイレ』を」と言われた。「ほかの保護者にも配慮(はいりょ)しないと。男子が女子トイレを使うとなると」。「男子じゃありません!」とハナ。「わかってる。そういうつもりで言ったんじゃない」。「『だれでもトイレ』なんか使ってたらみんなに気づかれちゃう」。また不安が…。

scene 03不安で涙が止まらない
ないようを読む

トイレで小学校の男子の制服に着がえる。やっぱり不安で涙(なみだ)が止まらない。外で待っててくれたママに言った。「女子トイレ使ってもいいって言われるのにどれくらいかかると思う?」。ママは、「さぁ、わからない。だからお休みのあいだにいっしょに考えてみよう。聞かれたときに何て言うか」って。「そんなの聞かれたくないよ、私。みんなと同じようにしたいだけなのに」。ママは「そうよね」と言ってくれるけど…。

scene 04法律上の名前はトーマス
ないようを読む

ママが車で小学校まで送ってくれた。最後の日だから授業もないし、学校には行きたくないと言ったけど、「最後の一日だからしんぼうして」と言われ、あきらめて車をおりた。校舎の手前でイザベラたちに会ってしまった。「トーマス。トム、トム。何? 無視すんの? ひどくない?」と言ってきた。トーマス…ハナの法律上の名前。イザベラはわざとこの名前でハナをよぶ。「おこんないでトミーぼうや。シャツに寄せ書きしてあげようか」とイザベラ。「もう行きたいんだけど」とハナ。「行けば、勝手に」。だまってその場を立ち去った。「もう会えなくて残念」とイザベラたちの笑う声が聞こえた。

scene 05新学期前の楽しい休暇!
ないようを読む

「みなさん、小学校を卒業したハナ・ブラッドフォードです」。朝、起きていくとパパがそう言った。「ありがと。拍手(はくしゅ)は結構よ」とハナ。「今日は自由になった最初の日。だから思いっきり楽しまなきゃ」と言うと、「外にも出なさいよ。休みのあいだずっとおかしを食べながらゲームされちゃたまらない」とママ。「んなわけないって」。でも結局ハナと兄のジャックはテレビゲームに熱中。新学期前の楽しい休暇(きゅうか)だ。テコンドーの練習にも行く。卒業祝いのママからのプレゼントはすてきな服。そしてパパからのプレゼントは自転車! さっそくヘルメットをつけて近所を走る。サイコー! テコンドーの練習も楽しい。

scene 06女の子用の服で変じゃないかな
ないようを読む

中学校の服をママと買いに行った。試着室から出てママに見せる。女の子用の服だ。「変じゃないかな」。少し心配になる。ママと並んで鏡の中の自分を見る。全然変じゃない。安心した。家に帰ってカバンからタブレットを取り出してひさしぶりに開いた。トランスジェンダーのサイト。『学校って、十代のトランスジェンダーにとってキツいものだよね。でも自分だけでかかえこんじゃうのはよくない。それがいちばん大事。何かあったら相談すること。友だちでもいいし、家族や先生だっていいから、ひとりじゃないってこと、わすれないで』って。でもだんだん不安になる。テコンドーの練習をしていても、落ち着かない。

scene 07だんだん不安が大きくなる
ないようを読む

入学式の前の夜。不安がおさまらなくて部屋で泣いていたらノックが聞こえた。「入っていい?」。ママだった。「明日行けそう?」と聞かれて首をふった。だめかもしれない。「ハナ…」。「どうしたらいいかな、気づかれちゃったら?」。涙(なみだ)が止まらない。「男子の制服でいたほうがいいのかも」と言ったら、ママは「そう思うならそうしなさい」って。「パパとママはいつだってあなたの味方だから」と言ってくれる。不安で不安でママにだきついた。「だいじょうぶ。ねぇ知ってる? 最初の日がいちばん大変なの」。そう言ってほほをなでてくれる。ハナはうなずいた。

scene 08「じまんの娘だよ」
ないようを読む

いよいよ入学の日の朝。キッチンへおりていったら、「かわいいじゃん」と兄のジャックが言った。女子の制服を着たんだ。パパとママにも見せた。「どう思う、パパ?」。パパはじっとハナを見て、「じまんの娘(むすめ)だよ」って。そしてハナをだきしめてくれた。今日からヒルビュー中等・高等学校に通う。車で送ってくれたママが、「いっしょに行こうか?」と言ってくれる。首をふった。「いつでも電話してきていいからね。トイレのこと聞かれたら何て言うか覚えてる?」ってママ。「うん、覚えてる」と答えた。

scene 09入学初日のドキドキ…
ないようを読む

ママと別れてひとりで学校に入っていった。大勢の生徒たちが登校してくる。やっぱり不安だ。息苦しい。ドキドキが止まらない。どうしよう…。そのとき、「ねぇ、ちょっと」とだれかが話しかけてきた。「私?」。「新入生ってどこ行くの?」と落ち着かない感じでその子が言う。「私も今日が最初だから」とハナ。「いっしょだ。場所聞いてないよね、8時30分って時間だけで」。あたりを見回していたその子が、「あれ先生だよね? 聞きに行こう。それでもわかんなかったら、うちら迷子だよ。行こ!」とハナのうでをとった。

scene 10新しい友だち
ないようを読む

終業のベルが鳴る。みんな中庭へ出ていく。ぽつんとひとりでいると、「ハナ!」とさっきの子が声をかけてきた。オリビアという子だ。「ここおいでよ」と自分のとなりへよんで、いっしょにいた二人の子を紹介(しょうかい)してくれた。「小学校からの友だち。こっちはナタリー。そっちはジャスミンっていうの。ハナだよ、さっき話した子」。「おんなじクラスだよね」とジャスミン。「フレーザー先生」とハナ。「そう、いい人っぽい」とジャスミン。「バクスター先生より絶対にいい」とうらやましそうなナタリー。「そっちのクラスがよかった」とオリビアが言うと、ナタリーもジャスミンもうなずいて笑った。

scene 11「週末遊びに来て」とさそわれた
ないようを読む

フレーザー先生の授業。席はジャスミンのとなり。「作者にとってコミュニティーは、…この詩の第一連でどう表現していますか」とフレーザー先生。みんな手を挙げる。ハナも手を挙げたら、「ハナ」と先生が指名した。「居場所?」。「そうです。もっと自信持って」と言われ、「居場所」とハナ。「その調子」と先生。ようやく笑顔になることができた。休み時間はオリビアたちと楽しく話して過ごせる。夜、宿題をしていたらスマホに着信があった。「新しいお友だち?」とママ。「オリビアから。週末遊びに来てって」とハナ。「返事したら宿題よ」ってママが言った。すぐ返事を送った。

scene 12「なんで『だれでもトイレ』使ってんの?」
ないようを読む

休み時間、ジャスミンがパーティの招待状をくれた。フィンとジェイソンにもわたすと、フィンが「ビリーもよぶの?」と言う。「決めてない。なんで?」とジャスミン。すると、「あいつ、ハナが好きだから」と言った。「ハナ、あいつ好き? 好きならパーティよぶけど」とジャスミン。「だめだよ」とハナ。「だめって、ビリーが? それともパーティによぶこと?」。みんなハナを見る。「ちょっとおトイレ行ってくる」とハナ。するとジェイソンが、「ねぇ、なんで『だれでもトイレ』使ってんの?」と聞いてきた。またみんながハナを見る。どうしよう。「入ったことない? 広いのよ。それに一人で使えるし、待たなくていいし」。そう答えたらみんな納得した。

scene 13クラス委員への立候補?
ないようを読む

一時間目の数学が終わったとき、「ハナ、ちょっといいかしら」とフレーザー先生によばれた。「どう? もうなれた?」とフレーザー先生。「はい…。ありがとう」。すると先生が、「じゃあ、クラス委員に立候補してみない?」と言った。「私が?」。おどろいた。そしたら、「好かれてるし、みんなのためになる」って言う。「自信ありません。そんなのやったことないし」と答えたら、「やってみるチャンスよ。まだ先だから、みんなとももっと打ち解けるだろうし、考えてみて」と言われた。「はい、それじゃ」。

scene 14イザベラが転校してきた?!
ないようを読む

『だれでもトイレ』から出ようとしたら、外で話している声が聞こえた。「これはあなたの担任の先生の考えなの。転校初日になんでって思うだろうけど、とにかくカウンセラーと話してちょうだい」。「ちゃんと言ったのに。これはスケボーで転んだだけ。サイテー」。「サイテーでもなんでも、お昼食べたらまた来て」。話が終わったようだったのでドアを開けて出て息をのんだ。「トーマス?」という声。そこにいたのはイザベラだった。外へかけだしていくハナ。授業中も落ち着かない。不安で不安でしかたがない。休み時間にママに電話しても、ずっと留守電メッセージでつながらない。どうしよう。

scene 15みんなに知られたらどうしよう
ないようを読む

泣きそうな気持ちでいたらオリビアがとなりにすわった。「バクスター先生、化学の実験で…」。話が何も耳に入らない。息苦しい。「ハナ? だいじょうぶ、ハナ?」。オリビアが気づいて心配してくれる。「気分悪い」と立ち上がると、「ついて行こうか?」とオリビア。「いい、平気」。『だれでもトイレ』の中でひとりになって涙(なみだ)があふれてきた。どうしたらいいかな、気づかれちゃったら。イザベラの声が頭にうかぶ。『トム、トム。何? 無視すんの?』。自分で言ったこと、『男子の制服でいたほうがいいのかも』。パパの声、『じまんの娘(むすめ)だよ』。鏡の中の自分を見て涙が止まらない。ママの声、『愛してる』。必死で泣くのをこらえた。

scene 16イザベラにも何かトラブルが?
ないようを読む

覚悟(かくご)を決めてイザベラのところへもどる。「あら、トミーぼうや」。「その言い方やめて」。「なんで? スカートはいてるから?」。「なんでここにいるの?」と言うと、「トミーぼうやに会いたかったの」とイザベラが言う。そのとき、通りかかった男子がイザベラにぶつかった。「ちょっと!」とイザベラ。するとその男子は「オレになんか言ったか?」とイザベラに言った。「別に」とうつむいてしまうイザベラ。「ならいいけど」と男子たちは笑いながら行ってしまった。だまっているイザベラの手首にはあざがあった。「それどうしたの?」と聞くハナに、「関係ないでしょ」と言ってイザベラは行ってしまった。

scene 17イザベラと話し合うつもり
ないようを読む

夜、ママに今日あったことを話す。「ママが校長先生に言おうか?」とママ。「逆ギレさせるだけ」とハナ。「じゃどうするの?」。「話し合う。イザベラと」とハナ。「いや…、それはどうだろう」とママ。「だれかに言いふらすかもと思ったら校長先生に話す」とハナ。「わかった。何かあったらすぐ電話して」とママが言ってくれた。

scene 18だまっていることの見返りは
ないようを読む

次の日。イザベラがひとりでベンチにすわっている。ハナは近づいてとなりにすわった。「トミーぼうやに会いたかったって言ったの、マジにとらないでよね」とイザベラ。「たのみたいことがあって」とハナが言った。「なんであんたのたのみ聞かなきゃなんないの」。「なんでって。それは、おねがいしてるし。おたがいここじゃ新入りだし」。「あたしのこと知らないくせに」。「そうだよね。知らない。友だちじゃないのもわかってる。でもだまってて。おねがい」とハナ。「見返りは?」。「何がほしい?」。「考えとく」とイザベラ。立ち去るハナ。

scene 19スケートパークで遊んでいると
ないようを読む

スケートパークでみんながスケボーやローラースケートの練習をしている。ハナやオリビアたちも来ていた。「やっぱり映画見に行かない?」とハナ。「やるなら今だよ、空いてるし」とジャスミン。「どうする?」とオリビア。あまり気乗りしないハナだったけど、「やろう。楽しいって」とオリビアにさそわれてやってみることにした。キックボードに乗ってみて、「すごく楽しい」とハナ。「でしょ」とオリビアも楽しそうだ。けれど、ふと横を見たハナの顔色が変わった。クロスバイクに乗ってやってきたのはイザベラだった。「楽しんでる? ハナ」。そう言ってイザベラは行ってしまった。

scene 20イザベラとぶつかってしまった
ないようを読む

ハナたちがスマホで自撮(ど)りしていると、イザベラがうしろからやってきてハナにぶつかり、スロープの下に転げ落ちた。「いたっ」。「だいじょうぶ?」とかけよるハナたち。イザベラはサッと手首のあざをかくす。「わざとやったでしょ」。「わざとじゃない。ごめんなさい」とハナ。「わざとよ。見てたもん」とイザベラの友だちが言う。「あやまってるのに」と言うオリビアに、「あんたに言ったんじゃない」とイザベラ。「あたしもあなたに言ってない」とオリビアも言い返した。「本当にごめんなさい」とハナ。するとイザベラは「ごめんじゃすまない」と言って、横の子に何かひそひそ言った。その子がハナを見て、笑った。ハナはいたたまれなくなってかけだした。

scene 21「イザベラ、しゃべっちゃったと思う」
ないようを読む

駐車(ちゅうしゃ)場で待っていたママの車にもどり、だまって乗りこむハナ。「早いのね。どうかした? 何があったの?」と言うママに、「もう帰ろう」とハナ。すると、「何があったか聞いたらね」とママが言った。「イザベラ、しゃべっちゃったと思う」とハナ。息をのむママ。「きっとみんなにも知られた」とハナ。遠くに、外へ出てきてハナを探しているオリビアたちが見えた。ママはエンジンをかけて車をスタートさせた。ぼうぜんと見送るオリビア、ジャスミン、ナタリー。

ファースト・デイ わたしはハナ!
(1)「新学期はドキドキ…」
ハナはトランスジェンダー。もうじき中学生になるのを機に女の子として再出発しようと心に決めた。新しい友達もできて学校生活は順調に始まったかに見えたけれど…

クリップ

教材きょうざい資料しりょう

教材・資料(先生向け)

配信はいしんリスト

今年度こんねんど放送ほうそう

その放送ほうそう