大気や水にあふれるわたしたちの地球は、地震(じしん)や噴火(ふんか)が絶え間なく起こる、生きている星です。津波(つなみ)から命を守る方法を研究している、保田真理(やすだ・まり)先生といっしょに、今回は、津波はどうして起きるのかを考えましょう。
海からおしよせる津波。2004年、インド洋一帯をおそった大津波では、亡(な)くなった人は22万人以上。津波は大勢の犠牲者(ぎせいしゃ)を出す災害です。でも、「避難(ひなん)をすれば命を守れる災害」なのです。今回の先生は、東北大学災害科学国際研究所の保田真理さん。宮城県多賀城(たがじょう)市立天真(てんしん)小学校5年生のみんなといっしょに特別授業をします。2011年3月11日の東日本大震災(だいしんさい)。多賀城市は津波におそわれ、市内の3分の1が水につかりました。
津波とふつうの波のちがいは何でしょう。「海の波はどうやって起きると思いますか?」。保田先生がたずねると、「地球が動いているから」、「風で水がゆれる」といった答えが…。「ふつうの波は風によって起こっています」(保田先生)。保田先生は、実際に波を起こしてみせます。用意したのは、水をはった水槽(すいそう)。そして送風機。送風機で水面に風を送ると、風が当たったところが波立ってきました。でも、水面は波立ちますが、水中はほとんど動いていません。これがふつうの波です。
では、津波はどうやって起きるのでしょう。地球の表面は、プレートとよばれる巨大(きょだい)な岩が組み合わさってできています。そのさかい目が日本にはたくさんあります。海底深くでプレートとプレートはおしあっています。それが限界に達すると、一方のプレートが一気にはねあがって地震が起きます。そのとき海面がもり上がり、陸地におしよせる。これが津波です。ふつうの波とはぜんぜん力がちがう津波。それを実験で見てみます。
保田先生が持ってきたのは、津波と同じような波を作る装置(そうち)。その名も「津波はかせ」です。「津波はかせ」で波を起こすと、波は模型(もけい)の堤防(ていぼう)をこえ、陸地の人形をおし流してしまいました。津波は、海底で起きた地震で水面が大きくもりあがり、ひとかたまりとなった波が一気におしよせるもの。同じ高さの波でも、津波とふつうの波ではおしよせる水の量も、勢いもぜんぜんちがうのです。「津波はただの高い波。そう油断していたらとても危険(きけん)です。津波のおそろしさをきちんと認識(にんしき)しましょう」(保田先生)。
東日本大震災で東北地方をおそった津波の高さは、いちばん高いところで40.4m。13階建ての建物の高さにも相当します。このときの津波は日本に来ただけではありません。広大な太平洋をわたり、アメリカの西海岸や、地球の反対側のチリまでとどいています。ものすごいエネルギーです。反対に、チリから日本に津波がおしよせたこともありました。1960年のチリ地震津波です。この津波でも大勢の犠牲者(ぎせいしゃ)が出ました。遠いところで起こった津波でも、ぜったいに油断は禁物です。
ふつうの波と津波のちがい。次は、ものを流してしまう威力(いりょく)のちがいを、東北大学の実験装置(そうち)で見てみましょう。まずはふつうの波。装置の中でうかんでいる木は、行ったり来たり。水面をただよっています。でも津波は、水のかたまりが、一気に木をおし流してしまいます。流れ方も速さもぜんぜんちがいます。津波は、家や車もおし流してしまうのです。
津波にどれほどのスピードがあるかというと、海の深いところでは、なんとジェット機と同じ、時速800km。陸に近づくにつれ波は高くなり、その分、速度は落ちますが、陸上でも、自転車を急いでこぐのと同じくらいの速さなのです。海底での地震が引き起こす津波。津波が近くにせまってきたら、にげきることは不可能に近い。では、津波から命を守るには一体どうしたらいいのでしょう。「津波の前には必ず地震があります。だから、地震が起きて、海の近くや低いところにいるときは、すぐに高台へ避難(ひなん)してください。津波は、避難をすれば命を守れる災害です」(保田先生)。
「今日の防災ポイントは、津波は地震のあとにやってくるということです。地震のゆれがおさまったら、津波のことを思い出してください。津波が来てからにげても間に合いません。すぐに高いところに避難(ひなん)してください」(保田先生)。