
(オープニングタイトル)

「え? 何ここ?」。アイが目をさますと、知らない部屋にいました。とつぜん、「やあ!」と何かあらわれたので、「わっ!」とびっくりするアイ。それは、シッチャカでした。つづけて「ヘイヘイ!」とあらわれたのは、メッチャカです。びっくりするアイに、「ここは、なやみをかかえた子どもがまよいこむ、ゆめの世界なの。ここに来たってことは、アイちゃん、なやみがあるんでしょ?」とメッチャカが言います。「おいらたちがなやみを解決(かいけつ)するから聞かせてごらん。ちなみに、しゃべるんじゃなくて、歌って!」とシッチャカ。「おいらの演奏(えんそう)に合わせて、サン、ハイ!」。「えっ、歌?」。

しかたなく歌い出すアイ。「♪となりの席のユウくんが ちょっと変わってる子なんだ 授業(じゅぎょう)中にね えんぴつを ずっとコロコロさせてたり 体操着(たいそうぎ)バンバンたたき続けたりするから ユウくんの動きが 気になって授業に 全然集中できない!」。アイのなやみを聞いて、「あら~、そうなんだ~」、「それはなやむのう~」とメッチャカとシッチャカ。「じゃあ、『やめて!』って言ってみれば?」とメッチャカが言いますが、「何度か言ったんだけど、結局また始めちゃって…」とアイ。「何か理由があるのかな」とメッチャカ。するとシッチャカが、「本人に聞いてみよう!」と言いました。

そこで「はい、どうぞ~」とメッチャカが取り出したのは、“ココロのでんわ”。「受話器を持って、気持ちを知りたい相手のことを思いうかべると、その人のココロの中とつながって何でも本当のことを答えてもらえるんだ」と言います。「さっそくユウくんのココロに電話してみて」と言われ、「もしもし…」と話しかけるアイ。すると、「はい、もしもし」とユウの返事が聞こえました。「あ、ユウくん? ねえ、どうして授業(じゅぎょう)中にえんぴつころがしたり、体操着(たいそうぎ)のふくろをバンバンたたいたりするの?」とアイ。「いや…あれは…」と口ごもるユウ。「ユウくん、何でも話して」とメッチャカが言います。

ユウが話し始めました。「実はぼく、光がにがてなんだ。ほかの人と光の感じ方がちがうらしくて」。おどろくアイに、「アイちゃんは、教室の画びょうなんかはどう見えてるの?」と言います。「ぼくにはこんなふうに見えるんだ」。教室の小さな画びょうが、ユウの目にはギラギラ光って見えるのです。「ほかにも、教科書やノートに当たった光がギラギラして見えて、目がいたいって感じることがあるんだ。みんなが授業中ペラペラめくるたびに、『ウッ』ってなっちゃうこともあって…」とユウ。アイは、ユウが体育のときに活躍(かつやく)していたことを思い出し、そのことについて、ユウに聞きました。すると、「だいじょうぶなときもあるんだけど…」とユウ。

「どうしてだいじょうぶなときとそうでないときがあるの?」とメッチャカ。すると、「光がさす場所って変わるでしょ? 時間によって気になる場所が変わるし、日によってもちがうし。授業(じゅぎょう)中、教室から出たいくらいつらいときもあるんだけど、でもそれはだめだからなんとかがまんしようとしていると、えんぴつころがしたり、体操着(たいそうぎ)のふくろをさわったりしてしまうんだ」とユウ。アイは、ふと思い出したように、「わたしがユウくんに声をかけたとき、急にこわい顔してむこう向いちゃったけど、もしかして…」と聞くと、ユウは「あのときは…。急に光が目に入って、アイちゃんのほうを見られなかったんだ」と打ち明けました。

「そうだったんだ。わたしのこと無視(むし)したわけじゃなかったんだ…」と受話器を置くアイ。するととつぜん、「なるほどねー!」という声がして、テレビのスイッチが入りました。「はい! お茶とお寿司(すし)が大好き、ジロー博士(はかせ)じゃ!」と画面にあらわれたジロー博士。「ユウくんのように苦しみをかかえている子は、実はいっぱいおるんじゃぞ。ただし、理由は人それぞれちがう。たとえば、音がほかの子より大きく聞こえてしまうことでこまっている子や、洋服がチクチクしてささるように感じてこまっている子もおるんじゃ」と言います。

「そういうことでこまっているって、まわりの人には伝わらないから、大変だろうねぇ」とメッチャカ。するとジローはかせが、「ねえ、アイちゃん。カレーライスは好きかい?」ととつぜん聞きました。「え、カレー? 大好きですけど」とアイ。すると、「同じカレーを食べても、『すごくからい』って食べられない子もいれば、『ぜーんぜんからくない』って言う子もおるじゃろ? 自分にとってからくなくても、ほかの子にはからいかもしれない。ものの感じ方は人それぞれちがう、ということ。さらばじゃ!」。そう言うとジロー博士(はかせ)は消えてしまいました。

「ものの感じ方は人それぞれちがう…か。うん」と考えこむアイ。「おっと、そろそろ夜が明けるよ、アイちゃん」、「どう? なやみは解決(かいけつ)できた? もうねむりから目覚める?」とシッチャカとメッチャカが言います。すると、「ちょっと待って待って。ユウくんはまぶしく感じすぎちゃうから、えんぴつをころがしたりしてたんだって知ることができたけど、わたしやクラスのみんなはどうしたらいいの?」とアイが言います。「ユウくんの事情(じじょう)はわかるけど、でもやっぱりやめてほしい。勉強に集中したいし、気になっちゃうもん」。「そうだよねぇ」、「新たななやみ、生まれました」とメッチャカとシッチャカ。

「うーん」と考えるアイ。「ユウくんが何かすごしやすくなる方法って、ないのかなぁ。ちょっとでも『まぶしい』と感じなくなる方法…」とメッチャカが言うと、「じゃ、ハイ!」とシッチャカが手を挙げました。「教室を真っ暗にする」と提案(ていあん)。でも、「それだと黒板の字が見えないよ。だめだめ」とアイ。「そうかー。じゃ、ハイ!」とまたシッチャカ。「ユウくんは画びょうやノートがまぶしいんだから、画びょうやノートが見えない席にすわってもらう」。でも、「そんなこと現実(げんじつ)的に可能(かのう)なのかな」とメッチャカ。「光がさす場所は時間によっても変わるんだよ。ずっと移動(いどう)しなきゃいけなくなっちゃう」。

「あー、もうギブアップ!」とシッチャカ。するとアイが、「ユウくんは、どうしてほしいんだろう」と言いました。「わたしはまず、それを知りたいな。ユウくんに聞いてみる」とアイ。「それがいいかもね。聞かないで、いいかなと思ってやってもぎゃくにめいわくになっちゃうこともあるかもしれないし」とメッチャカも言います。「うん。もしかしたら、何もしてほしくないかもしれないし。とにかく、ユウくんに直接(ちょくせつ)聞いてみるよ。ゆめからさめたら、“ココロの電話”使えないでしょ」とアイが言いました。「そうだね。おたがいに新しい発見があるかもしれないしね」とシッチャカ。

「うん。なんて声かけようかな…」と考えるアイ。「おいらなら、『なんでなんで』って、まず質問(しつもん)したいな」とシッチャカ。「わたしは、ユウくんが話しやすいように、『どう感じるの?』って聞くなぁ」とメッチャカ。「そうきたか。たしかに、『なんでなんで』って聞いたらプレッシャーになるもんなぁ…」。――ここで目をさましたアイ、元気に飛び起きました。果たして…。