（オープニングタイトル）

とつぜんテレビのスイッチが入り、ジローはかせがあらわれました。「ジローはかせの、“クイズ！　いちばんわるいのだ～れだ？”」。「イエーイ！」ともり上がるシッチャカたち。しかたなく「イ、イェーイ…」とアイ。「アイちゃん、テンションひくひくー」、「もっと積極的な参加おねがいしまーす」と言われますが、「いやぁ、なやみもないのに勝手にゆめの世界に連れてこられたら、こんな感じになるって」とアイ。「だって、クイズやるなら参加者多いほうがいいと思ってさぁ」とシッチャカに言われ、「わかった、わかった。参加する以上、当てにいきます！」とアイ。「テレビの前のみんなもいっしょに考えてみてね」とメッチャカ。

ジローはかせ「それでは問題です。電車の優先（ゆうせん）席にサラリーマンのおじさん、わかいおねえさん、おばあさんがすわっていました。駅に着き、おじいさんが乗ってきました。おじさんが席をゆずろうと立ち上がって近づきます。すると、近くに立っていたわかいおにいさんがその席にすわりました。おじさんはおこっておにいさんを注意しました。『おい、何してんだ、キミ！』。だけどおにいさんは気づかない。さあ、いちばん悪いのはだ～れだ？」。「これ、かんたんじゃない？」とアイ。「どう考えても…、わかいおにいさん！」と３人が声をそろえました。「おじいさんを無視（むし）してすわるなんて」。「わかいんだから立ってればいいのにね」。

「では、おにいさんに“ココロのでんわ”をかけてみます。もしもーし」とジローはかせ。「もしもし」とおにいさん。「おにいさんは優先（ゆうせん）席にすわったとき、もともとすわっていたおじさんがおじいさんにゆずるために席を空けたこと、気づいてましたか？」とジローはかせが聞くと、「そうだったの？　知らなかった」と言います。さらに「優先席にすわったのには理由があったんですか？」とたずねると、「実はおれ、ひどい腰痛（ようつう）持ちなんです。電車がゆれるたんびにこしがいたむんで、立ってるのがつらくってすぐすわっちゃいました」とおにいさん。さらに、席をゆずったおじさんがおにいさんを注意したことも「音楽聞いていたからかなあ。気づきませんでした」と言います。

ジローはかせ「さあ、みなさん。この事情（じじょう）を知った上で、いちばん悪いのはおにいさんだと思いますか？」。「いや…。全然悪くないと思った」とアイ。「うん、すわるの仕方ないよね」、「おいら、おにいさんの見た目に引っぱられすぎてたのかもなぁ」とシッチャカとメッチャカも言います。「じゃあ、いちばん悪いのはだ～れだ？」とジローはかせが聞きます。「おにいさんをおこったおじさん？」とメッチャカが言ったので、「え？　席ゆずろうとしたのに？」とシッチャカはびっくり。「でも、電車の中で大きな声でおこったのは、よくないんじゃない？」とメッチャカ。「そうかも」とアイ。「そう言われればそうか…」とシッチャカもそんな気がしました。

ジローはかせ「では、おじさんに“ココロのでんわ”をかけてみます。もしもーし」。「はいはい」とおじさん。「おじさんは席をゆずったとき、そこにすわったおにいさんを大きな声で注意しましたね。なぜですか？」と質問（しつもん）するジローはかせ。「実は、最近父親を亡（な）くしましてね」とおじさんが言います。さらに「亡くなる少し前、体を悪くした父といっしょに電車に乗ったとき、だれからも席をゆずってもらえずに父がつらそうにしていたのを思い出して、つい強い口調で注意してしまいました」と言うのです。「ちなみに、すわったおにいさんに事情（じじょう）があったことはご存じでしたか？」と聞くと、「いえ、何も知りません」と答えます。

ジローはかせが聞きます。「さあ、みなさん。この事情（じじょう）を知った上で、いちばん悪いのはおじさんだと思いますか？」。メッチャカが「どうしてもおじいさんにすわってほしかったのに、おにいさんにすわられたから注意しちゃったんでしょ？　仕方ないと思うな」と言うと、「わたしもそうかな」とアイ。「あー、もうわかんない。いちばん悪い人ってだれ？」とシッチャカ。すると、「わかいおねえさんは？」とアイが言います。「なんで？」。「だって、おじいさんに席をゆずろうとしなかったわけだし」とアイ。「そうか。おじさんよりもわかいわけだし、ゆずってもよかったのかもね」とメッチャカ。「よし、じゃあ、わかいおねえさんで」とシッチャカ。

ジローはかせがおねえさんに“ココロのでんわ”をかけます。「おねえさんはおじいさんが電車に乗ってきたことに気づいていましたか？」。すると、「はい、気づいてました」とおねえさん。「となりのおじさんが席をゆずろうとして立ったことは気づいていましたか？」という質問（しつもん）にも「はい、気づいてました」と答えます。さらに「何か大きくて重い持ち物があったわけじゃないですよね」とシッチャカが聞くと「持ってません」。ここでメッチャカが、「すわったままだったのは何か事情（じじょう）があったからですか？」とたずねました。すると、「実はわたし、おなかに赤ちゃんがいるんです」とおねえさんが言いました。「席をゆずろうか、まよったんですけど、長い時間立ちっぱなしにならないようにってお医者さんから言われてたので」。思いもよらない言葉にアイたちはびっくり。

「そうか…」と考えるアイ。「いやぁ、まさかおなかの中に大きくて重いたからものがあったなんてねぇ」とシッチャカ。「おねえさんが妊娠（にんしん）してたのは意外だったね」とメッチャカもおどろいたようです。「ほんと、ほんと」。そこでジローはかせは改めて問いかけます。「じゃあ、みな、結局のところ、だれがいちばん悪いと思う？」。「うーん…」と考えこむ３人。「みんなそれぞれ事情（じじょう）があって、だれが悪いかなんて決められない」とアイ。「そうだね。悪いかなって思った人でも、仕方ないなって思えることばっかりだったし」とメッチャカ。「みんな最初とずいぶんちがう印象になったなぁ」とシッチャカも言いました。

「そうじゃろ。つまり、一面で判断（はんだん）してはいけないということじゃ」とジローはかせ。「一面って、その人の見た目ってこと？」と聞くアイ。「ああ、見た目も一面じゃな。あとは、わかいおにいさんがおじいさんを無視（むし）して席にすわったという自分の思いこみも一面じゃな」とジローはかせは答えます。「そっか、おにいさんはおじいさんを無視したわけじゃなかったし、すわる理由があったんだもんね」とメッチャカ。「見た目や思いこみで判断して決めつけてしまうと、まちがっているかもしれないってことじゃ」とジローはかせ。アイは「わたしもクラスのみんなを、『あの人はこういう人』って決めつけてることあるかも。だけど本人に言ってもらわないと、本当はどんな人なのかわからないよね」。

ジローはかせは3人に提案（ていあん）します。「それじゃ、自分で発表してみよう。“発表！　みんなにしってほしい本当の自分”」。最初はアイです。「じゃ、わたしから。わたしは読書ばっかりしてるから読書好きってクラスのみんなから思われてるけど、いちばん好きなのはダンスです！」と発表します。「小さいころから習ってて、けっこう得意なんだ」。続いてメッチャカが「わたしはシッチャカから、ごはんをあんまり食べない子って思われてるけど、実はすっごく食べます！」と発表すると、「えーっ、そうなの？！」とおどろくシッチャカ。メッチャカは「初めてデートしたとき、シッチャカが『メッチャカちゃんてあんまり食べないんだね、かわいらしいな～』って言ったから、あんまり食べないようにしているだけなの。わたし、ほんとはシッチャカ以上に食べるから！」。

「じゃあ、おいらも発表しまーす」とシッチャカ。「おいらメッチャカから、頭がよくて、かっこよくて、おもしろいって思われてるんだけど、実は…」と言いかけると、「いや、思ってないよ」とメッチャカ。「え！？」。「シッチャカは、発想はすごいけどたまにぬけてて、カッコいいけどおちゃめで、おもしろすぎないところがおもしろいって思ってる」とメッチャカ。「でも、シッチャカがすごく勉強してとっても頭がよくなる日が来るかもしれないよね。そうなると、それまでの考えがまちがった決めつけになっちゃうんじゃぞ」とジローはかせが言うと、「そうかぁ…。気をつけないと」とアイ。ジローはかせ「さあ、テレビの前のみんなもこんな感じで発表してみよう。みんなに知ってほしい“本当の自分”を！　では、さらばじゃー！」。