（オープニングタイトル）

「それではアイくんに歌っていただきましょう」とメッチャカ。「よ～」とシッチャカがピアノに向かいます。「タイトルは『なんでだよ！』」と、おこったように言うアイが歌います。「♪休み時間はいっしょに　おにごっこしてたユウ　いつもと変わらず元気だったのに　体育の授業（じゅぎょう）では　リレー選手を選ぶテストを　休んでいたんだ　『ズル休みすんなよ』っておこったら　『うるさい！』って逆（ぎゃく）ギレ！　なんなんだよ！♪」。

「おこってるねぇ」とシッチャカ。「ユウはおさななじみでさ、足が速くて、リレーいっしょに走るのが楽しみだったんだよ。なのに…」とアイ。「ズル休みしたからなっとくいかないんだ」とメッチャカに言われ「うん。ずっと仲よかったのに、なんか最近コソコソしているし」と言うアイ。「あ！　アイくんのことが好きなのかも！」とシッチャカに言われ、「いや、ないないない」とちょっとうれしそうなアイ。するとメッチャカが「じゃあ、聞いてみれば？」と受話器を取り出しました。「この“ココロのでんわ”を使えば、相手のココロの中とつながって、なんでも本当のことを答えてもらえるの」と言います。

さっそくアイが電話します。「もしもし、アイだけど」。「何？」。「あ、いや。なんでリレーのテスト休んだの？　休み時間は元気だったのに、急に休むのはおかしくない？　本当に体調悪かった？　ていうか、体調悪くてあんなにおこれるもんなのかな？　大体、最近様子おかしくない？」。次々に問いつめるアイ。「ちょっと落ち着こうか」となだめるメッチャカとシッチャカですが「こないだだってさ…」とアイは続けます。教室から出ていこうとしたユウに『あれ？　ユウ、そのかばん何入ってるの？』とアイが聞いても『なんでもない！』とユウは走っていってしまったのです。

「何、あのときの態度（たいど）！」とアイ。「え？」とメッチャカは何かわかったようです。「いいでしょ。とにかく、男子には言いにくいの！」とユウ。「ねぇユウちゃん、もしかして、生理だったんじゃない？」とメッチャカが聞きました。「うん、そう」とユウ。「そうか、体育をお休みしたの、生理だからか」。すると「せ、せ、生理！？」とアイがどぎまぎ。「もうそのワード言わなくていいから！　はずかしいよ。だって、エッチなことだから」。するととつぜん、「全然ちがーう！」という声がして歌が聞こえてきました。「♪もっと知ったら広がるよ　もっと知ったら変われるよ　ジローはかせの豆知識〈まめちしき〉♪」。

テレビのスイッチが入ってジローはかせが画面にあらわれました。「どうも、ジローはかせじゃ。アイくん、生理はちっともはずかしいことではないんじゃよ」と言います。「えぇーっ？」。「そう思ってしまうのは、生理が何かわからないからではないかのぅ」。「まぁ、よくは知らないけど…」とアイ。「では、生理にくわしい先生にご説明していただくとしよう」。ジローはかせが消えて、「こんにちは。今日は先生が生理についてお話します」と、ふみ先生が画面にあらわれました。「アイくんは、生理がどうしてはずかしいことだと思うの？」と言います。

「だって、その話題になるとみんな照れくさそうにするし、説明聞くときも女子と分けられるから…」とアイ。するとユウが「男子はかんちがいしているんだと思う。生理用品を入れたポーチを持ってたら『あいつ、生理じゃん』とかからかわれたし。からかうことじゃないと思う」と言います。「けどさ、はずかしそうにしてたじゃん？　女子だってほんとはエッチなことだと思ってるからじゃないの？」とアイ。「それは…男子がからかうから」。すると、「そうか。男子にわかってもらえないから女子もオープンにしづらくなっているんだね。じゃあ、ちゃんと生理の仕組みを科学的に説明します」とふみ先生が言いました。

「生理は、おなかがへることと変わらない自然な現象（げんしょう）。体が将来（しょうらい）妊娠（にんしん）するための準備（じゅんび）をしているの。女性（じょせい）のおなかの中には、赤ちゃんを育てるための子宮（しきゅう）があるのは知ってるかな？」。「なんとなく…」とアイ。「子宮では毎月赤ちゃんのためのベッドを作っていて、妊娠しなかった場合は、はがれ落ちて血液（けつえき）といっしょに外へ出ていく。そのとき、子宮がギュッとしぼられたり、プロスタグランジンといういたみの物質（ぶっしつ）のせいで体調不良が起こったりすることを『生理痛（つう）』といいます」。

「生理の期間はだいたい三日間から七日間。出血の量が『二日目はいちばん多くて、三日目以降（いこう）量はへってくる』みたいに変化します。頻度（ひんど）はだいたい一か月に一度。生理前にも体と心にさまざまなえいきょうがあって、その期間が十日から二週間。月の半分以上のあいだ、ねむかったり、落ちこんだり、頭やおなかが痛かったりすることもある。だからユウちゃんは体育をお休みしたんだね」。「その前までおれとおにごっこしてたのに？」とアイが言うと、「ホント、とつぜん来るんだよ」とユウが言いました。

「それに症状（しょうじょう）もさまざまだし、今回いたいなぁとか、平気だなぁとか、そのときどきによって差があるんだ。だから、生理中は体を休めていいって、わかってほしいな」とふみ先生。すると、「でも、女子だけ休んでいい期間が一か月に一回もあるって、ちょっとズルい気もする」とアイが言いました。「え～！？」とおどろくユウとメッチャカ。するとふみ先生は、「すなおに発言してくれてありがとう。じゃあ、街の声を聞いてみようか」と言いました。「どうやって？」とアイ。そこでメッチャカが、「はい、“丸見え双眼鏡（そうがんきょう）”。のぞいてみて」と、双眼鏡をアイにわたしました。

――「わたしは修学（しゅうがく）旅行のときに生理が来てしまって、みんなといっしょにおふろに入れなかったのがつらかった。スカートに血がもれてしまったときも、とてもはずかしかった」。「学芸会でだいじな役をえんじるのに、生理にならないか心配です。生理痛（つう）で休んでめいわくをかけないように、役をおりたほうがいいのか、なやんでいます」。「わたしは生理痛がひどいほうだからって、ずっとがまんしてたんですけど、以前、いたみががまんできなくて、病院に行ったら『子宮内膜症（しきゅうないまくしょう）』という病気で、手術（しゅじゅつ）を受けたことがありました。とてもこわかった」。

街の声を聞いてだまりこむアイ。ふみ先生が、「ユウちゃん、生理痛（つう）がつらいときは、がまんせずに病院に行ってね。だいじな行事があるときに、生理の時期や期間を調整する方法もあるから、生理にくわしい婦人科（ふじんか）医に相談することも選択肢（せんたくし）の一つかもよ」と言いました。「はい」。すると、「アイくんは、街の声を聞いてみてどう思った？」とメッチャカ。アイは、「思ってたより大変なんだって…。ユウもこういう思いしてるの？」と言いました。「うん。わたしはリレーに出たかったけど、生理で走れなくて…。生理がないから、男子は好きなことを思いっきりできてうらやましい」とユウ。

「じゃあさ、ユウが生理でこまっているとき、手伝えることない？」とアイ。ユウは、「ううん。ただ、休んでいるときに、『ズルい』って思わないでほしいな」と答えました。「ごめん、もう二度と言わない」とアイ。「それ聞けてよかった。じゃあね」。“ココロのでんわ”が切れました。少し考えこむアイにふみ先生が言いました。「男の子にとって生理は関係ないことだと思うかもしれないけど、アイくんもユウちゃんも、生理がないと生まれてこなかったんだよ」。「あっ…」と気づくアイ。「だから、生理はみんなに関係のあることなんだって思ってみてほしいな。じゃ、バイバイ！」。そう言って、ふみ先生は消えてしまいました。

「生理がないと、おれも生まれてこなかった…かぁ」。するとシッチャカとメッチャカが笑いました。「なんで笑ったの？」。「だって、さっきまではずかしがってたのに、自分から『生理』って言ったから」。「みんなが生理の話をするから平気になったのかも」とアイ。「生理が当たり前で、かくさなくていいことってみんなが思えるといいな」とメッチャカが言います。「誤解（ごかい）してユウに『ズル休み』とか言っちゃったしなぁ」と考えるアイ。「だれだって体調が悪いときは、休んだっていいんだね」とメッチャカが言うと、「よーし、おれが誤解してる男子に『生理』を教えてやるかぁ」と意気ごむアイでした。