あらすじ一覧

オープニング

(オープニングタイトル)

scene 01親から子に伝わる「形質」

二組の親子の写真。親子の特徴を比べると、似ているところがあります。瞳の色が、一方の親子は青、もう一方の親子は黒。まぶたは、それぞれ二重と一重。髪の色も、それぞれ茶色と黒です。このような形や性質、つまり「形質」は、親から子に伝わることがあります。これを「遺伝」といいます。遺伝はどうして起こるのでしょう。

scene 02遺伝の規則性を見つけたメンデル

遺伝のしくみを最初に明らかにしたのは、メンデルです。19世紀の中ごろ、エンドウを材料として遺伝を研究しました。種子の形など7組の形質の伝わり方を実験で調べたのです。その実験の一つが、丸い種子を持つ「純系」と、しわの種子を持つ「純系」を受粉させて掛け合わせるというもの。「純系」とは、親、子、孫と代を重ねても、注目した形質が親と同じになることをいいます。丸い種子としわの種子の純系を受粉させると、子はすべて丸い種子になりました。

scene 03親から子に形質を伝える「遺伝子」

メンデルはこのような実験によって遺伝の規則性を見つけ、研究成果を発表しました。しかし、当時は理解されませんでした。メンデルの研究が評価されるようになったのは、彼の死後、同様の発見がされてからのことです。メンデルが考えた、親から子に形質を伝えるもの。それは今では、一つひとつの細胞の中にあることがわかっており、「遺伝子」と呼ばれています。

scene 04形質はどのように伝わるのか

ミヤコグサという植物の遺伝で伝わる形質にはいろいろあります。茎の色も形質の一つで、紫の茎と緑の茎があります。この茎の色を決めているのは遺伝子です。茎の色が紫と緑の純系を親として受粉させると、形質は子にどのように伝わるのでしょうか。茎を紫にする遺伝子をA、緑にする遺伝子をbとします。遺伝子は2個が対になって存在しているので、紫の茎の純系の親はAA、緑の茎の純系の親はb bという遺伝子を持つことになります。(優性の形質を示す遺伝子は大文字、劣性の形質を示す遺伝子は小文字で表す。※Aの対立遺伝子をbとした場合)

scene 05優性形質と劣性形質

対になっている遺伝子は、「減数分裂」によって分かれます。そして受粉により、子は両親から遺伝子の一方ずつを受け継ぎます。受粉させてできた種子が、子の代となります。育てると、茎の色はどうなるのでしょう。40日後、茎の色を見てみると、すべて紫色です。このように、子が親のいずれか一方と同じ形質を現すことを「優性の法則」といいます。また、子に現れる形質を「優性形質」、子に現れない形質を「劣性形質」といいます。

scene 06孫の代に現れる形質は「3対1」

この、子同士を受粉させ、できた孫の代の種子を育てると、茎の色はどうなるのでしょう。子の遺伝子は、親からAとbそれぞれの遺伝子を受け継いでいます。育てた茎は、紫…、紫…、紫…、そして緑もありました。緑のものはどれくらいあるのか、調べてみます。結果は、紫と緑はおよそ3対1。どうしてこうした割合になるのでしょう。

scene 07子の遺伝子、孫の遺伝子

子の遺伝子は、親からもらったAとb。これが減数分裂によって分かれます。受粉によりそれぞれの遺伝子を受け継ぎ、孫の遺伝子は、AA、A b、b A、b bの4種類になります。一つでも遺伝子Aがあれば紫の茎。遺伝子が両方ともbの場合だけ緑の茎になります。このため、紫の茎と緑の茎は3対1の割合で現れるのです。つまり、同じ形質を持つ親から生まれた子であっても、親と形質が違う場合があるのです。これは、茎の色だけではありません。株の大きさ、花の色などについても、同じように形質が伝わっていきます。

scene 08細胞の中の「染色体」

遺伝と深い関わりを持っているのが、「染色体」と「DNA」。細胞の中に見られる黒いひも状の物体、これが染色体です。ヒトの場合、一つの細胞の中に46本あります。男性の染色体を見ると、同じ形、同じ大きさの染色体が22対、つまり44本。残りの2本は、男性と女性を決定する「性染色体」です。男性と女性ではこの性染色体に違いがあります。2本が対になった染色体は、どれも一方は父親から、もう一方は母親から受け継いだものです。

scene 09遺伝情報の担い手「DNA」

染色体には、遺伝情報の担い手となる物質が入っています。DNAです。染色体は、細い糸のようなDNAが巻き付いてできています。DNAは、2本のリボンがらせん状に巻き付き合った構造をしています。このDNAの中に、遺伝の情報を記録した遺伝子がたくさん組み込まれているのです。

scene 10遺伝子にかかわる研究

2004年、ヒトのDNAの配列がすべて解明されました。現在では、どの部分にどんな遺伝子があるのかもわかってきています。ヒトの15番目と19番目の染色体にある遺伝子の配列。ここに、瞳の色の決定に関わる遺伝子が組み込まれています。さらに、別の染色体にある、がんやアルツハイマー病などの病気にかかわる遺伝子の存在もわかってきました。

scene 11遺伝子の研究がもたらすもの

京都大学の山中伸弥教授などが作り出したiPS細胞も、遺伝子の研究から生まれたものです。iPS細胞は、ヒトの皮膚などの細胞に四つの遺伝子を導入することで作られます。からだのどんな細胞にもなるという特徴を持っています。たとえば、iPS細胞から作られた神経細胞を、脊髄(せきずい)が傷ついて歩けなくなったマウスに移植するという実験では、マウスは再び歩けるようになりました。遺伝子を研究することで、医療分野に限らず多くの問題が解決できるのではないかと期待されています。