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なぜ第三次産業の割合がこんなに増えたの?~日本の資源・エネルギーと産業~

scene 01およそ100年で就業者数が倍以上に

宇宙飛行士、エンジニア、医者、パティシエ、飼育員…。さまざまな種類の仕事がありますが、それらは三つの産業に分類されます。まず、農業、林業、漁業などの第一次産業。次に、製造業、建設業、工業などの第二次産業。そして、商業、金融業、医療・福祉・教育などのサービス業や、外食産業・情報通信産業などの第三次産業です。産業別に働いている人の割合を表したグラフを見ると、1920年には30%に満たなかった第三次産業の就業者が、2015年には71%と倍以上になっています。どうして、第三次産業だけが、こんなに増えてきたのでしょう。そこで今回の疑問、『なぜ第三次産業の割合がこんなに増えたの?』。

scene 02第一次産業の時代から第二次産業の時代へ

まず、「人々の暮らし」の見方から考えてみましょう。1950年代以前は、農業や林業や漁業などの第一次産業がとても盛んだった時代です。生活に使うお金は、食料にかける割合が多かったといわれています。ところが1950年代に入ると、経済成長によって、暮らしの中には便利なものが増えていきました。テレビ、洗濯機、冷蔵庫という、通称“三種の神器”が普及したのです。電化製品によって、家庭生活はとても便利になりました。そして、1950年代の終わりごろには、国産の大衆車も登場しました。それまでの第一次産業から、電化製品などのモノを作る製造業や自動車工業などの第二次産業へと時代が移っていったのです。

scene 03価値観、嗜好の多様化によって

さらに、人々の価値観や好みが多様化してきている現代では、人々は次から次へと新しいものに目を向けるようになりました。みんなも持っているスマートフォン。このスマホを使った情報通信産業が急速に拡大したのです。そして人々は、グルメや旅行、娯楽のためにお金を使うようになり、外食産業や観光産業などが盛んになりました。人々は、より豊かなサービスを求めるようになったのです。時代の移り変わりによって、人々の生活や嗜好(しこう)が多様化していくなかで、コンビニチェーンや外食産業、情報通信産業などの第三次産業が増えてきたということなのです。

scene 04加工貿易で発展してきた第二次産業

第三次産業と比べ、第一次産業と第二次産業を合わせた割合は減少傾向を示しています。どういうことでしょう。次は、「貿易」という見方から考えてみましょう。資源の乏しい日本は、世界中から原材料を輸入し、それを加工して作った製品を輸出してきました。この「加工貿易」で発展したのが日本の第二次産業です。たとえば、オーストラリアから鉄鉱石を輸入し、鉄を製造してアメリカへと輸出していました。1950年代に入ると自動車の本格的な輸出が始まります。そして1970年代にはテレビやラジオなどの輸出も増加していきました。日本の製品は品質がよく価格が安いと、次第に外国でも人気となりました。

scene 05貿易摩擦、価格競争、産業の空洞化

しかし、1980年代。外国との貿易で生じる国家間の問題、いわゆる「貿易摩擦」が激しくなりました。アメリカでは日本製の自動車がたくさん売れたため、アメリカの自動車メーカーの業績が悪化し、多くの失業者が出てしまったのです。さらに、発展途上国などでも工業化が進んでいきました。そして始まったのが、世界的な価格競争です。日本企業は国内でのモノ作りを避け、従業員の給料が安いアジアなどに工場を移転させました。その結果、一部の産業では国内の生産が衰退していく「産業の空洞化」が起こりました。

scene 06貿易の自由化の影響で

また、農業などの第一次産業も貿易による影響を受け、貿易の自由化が進むと、価格の安い大豆やトウモロコシなどがアメリカなどの海外から輸入されるようになります。さらに、アメリカやオーストラリアなどから牛肉が輸入されるようになりました。広大な国土を持つ国は、大規模農場や牧場で大量生産、大量飼育ができるため、その分値段を安くできるのです。価格競争で劣勢に立ち、日本の畜産農家は厳しい状況のなかで生き残りを模索しています。第一次産業と第二次産業を合わせた割合が減少してきたのは、外国との貿易が関係していたのです。

scene 07第一次産業の巻き返し

今回の疑問、「なぜ第三次産業の割合がこんなに増えたの?」。「人々の暮らし」や「貿易」などさまざまな見方から、その理由が見えてきましたね。実は近年、第一次産業でも巻き返しが始まっています。ある畜産農家の養豚場を訪ねました。6000頭あまりが飼育されています。えさにこだわって飼育された豚肉は、甘く味わいがあると評判だそうです。実は、この畜産業者は、豚を飼育しているだけではありません。5年ほど前から直売所を設け、豚肉の販売を始めたのです。さらには、ギョーザやシュウマイの加工まで始めました。現在は、販路拡大のための営業活動に力を入れています。

scene 08「農業の六次産業化」

一から十まで自分たちの手でやっていく、これまでのどれにも当てはまらないような産業。これは、「農業の六次産業化」とも呼ばれています。農業の六次産業化とは、農業を一次産業としてだけではなく、加工などの二次産業や、サービス・販売などの三次産業まで含め、一次から三次までの一体化(1×2×3)をめざす次世代型の農業ビジネスのことです。近年では、こうして付加価値を高め、サービス業的な側面を持った農業のあり方も注目されています。

scene 09新しい技術、新たな資源

また最近では、風力や地熱などから電気をつくる「再生可能エネルギー」への取り組みも進み、さらに、さまざまな技術によって、日本近海でも新たな資源が採取できる可能性が期待されています。それは何だと思いますか。みんなも考えてみてください。