あらすじ一覧

なぜ瀬戸内の島々に人が集まるの?~中国・四国地方~

scene 01豊かな自然、温暖な気候

本州と四国に挟まれた瀬戸内海。大小たくさんの島々と、そこを行き交う船。棚田が広がり、豊かな自然に囲まれています。今回の舞台は瀬戸内地方。瀬戸内は、食材の宝庫。港にはさまざまな種類の魚や貝が水揚げされます。一年を通じて気候が比較的温暖で、レモンやみかんなど果物の栽培が盛んです。そして今、瀬戸内の島々に、日本のみならず世界中からたくさんの観光客が集まっています。瀬戸内の島のひとつ、香川県の直島(なおしま)では、2000年におよそ4万人だった観光客が、2016年にはおよそ73万人と大きく増えています。そこで今回の疑問、『なぜ瀬戸内の島々に人が集まるの?』

scene 023年に一度の『瀬戸内国際芸術祭』

瀬戸内の島の一つ、香川県の小豆島(しょうどしま)。島の砂浜に置かれた無数の子どもの像。空き地に置かれた巨大な顔のオブジェ…。島に点在しているのは、『瀬戸内国際芸術祭』のアート作品です。2010年に直島を中心に始まったこの芸術祭は、3年ごとに開かれ、その活動はほかの島々にも広がっています。2016年には、瀬戸内海に浮かぶ12の島と二つの港を会場に、200を超えるアート作品が展示されました。来場者数は回を重ねるごとに増えていき、2016年は100万人を超える人々が訪れました。

scene 03芸術祭のテーマは“旅”

瀬戸内の島々には美しい自然がのこされていて、アート作品の多くは、島々の自然と調和する形で展示されています。こうしたアート作品を見て回りながら、島々の自然に触れ合っていくという仕掛けです。「“旅”がこの芸術祭の大きなテーマになっている。だからここでアートというのは、瀬戸内を歩いてもらうための仕掛け、あるいは道しるべで作品を置いている」(総合ディレクター 北川フラムさん)。このアートイベント開催のきっかけには、島々が抱えていたある問題がありました。そこでまず、「地域の課題」という見方で考えてみましょう。

scene 04“ゴミの島”とよばれた豊島

開催地の島の一つ、香川県にある人口千人余りの豊島(てしま)。1970年代ごろから、若い人たちの多くが就職や進学で島を離れていきました。その結果、地域の過疎化や高齢化が進み、大きな問題になっていました。同じころから、豊島は産業廃棄物の問題にも悩まされてきました。処理場の建設が計画され、一方で、大量の不法投棄も始まっていました。“ゴミの島”といわれたこともありました。島の人々は長いあいだ苦しんできたのです。この豊島と同じように、ほかの島でも過疎化や高齢化の問題を抱えていました。こうした島々をなんとか元気にしようと有志が立ち上がり、2010年に開催したのが瀬戸内国際芸術祭です。

scene 05アートで活気づいた豊島

以来、豊島はアートで活気づくようになりました。島のあちらこちらには、芸術祭の作品が置かれています。芸術祭以外の時期にも、島では多くのアートイベントが開催されています。たとえば、『豊島ウサギニンゲン劇場』という小劇場では、島に住むアーティストの平井さん夫婦が音楽と映像のパフォーマンスを行っています。こうしたアートイベントが世界中の人々を魅了しています。「また来たいわ。」「今日は一日だからもっと長く島にいたいよ。島はとても自然で。」「とても詩的な感じがします。」(フランス人夫婦)

scene 06都会からの移住者も増えた

観光で島を訪れたことなどがきっかけで、都会から移住してくる人も増えているといいます。豊島で塩作りをする門脇さん。東京から、4年前にこの島に移り住みました。「生活していくなかで気づく豊かさがある。人もそうですし、いろんなものがとれるし、豊かな島だなと日々感じています。」 こうした動きは豊島だけでなく、ほかの島でも起きるようになっていきました。島を元気にするために始まったアートイベントがきっかけで、瀬戸内の島々に人が集まり、活気が戻ってきたのです。島に人が集まる理由はほかにもあるのか。次は「観光客のニーズの変化」という見方で考えてみましょう。

scene 07滞在型の旅のスタイルへ

近年、人々が観光に求めるものも変わってきています。かつては、有名な観光スポットを足早に回るという旅のスタイルが多くありました。しかし今は、長期間ゆっくり滞在して、その土地ならではの特別な体験を求める形に変化しているといわれます。瀬戸内国際芸術祭はこうした観光ニーズの変化に応えるもの。アート作品はたくさんの島に分散して置かれています。そのため多くの観光客は、何日かかけて島を巡りながらアート作品をゆっくり鑑賞していきます。芸術祭を訪れる人々の滞在日数も年々変化しています。2010年は日帰りが半数以上。しかし2016年には、宿泊する人の割合が7割を超えました。

scene 08アートイベントへの参加も楽しめる旅

さらに、滞在型の旅スタイルでは、アートを鑑賞するだけでなく、アートイベントにゆっくり参加することもできます。たとえば、芸術祭の作品『島キッチン』。空き家を再生して作った食堂は、「食とアート」で人々をつなぐ出会いの場になっています。「楽しいよ。いろんな人が来るし。海外の方も来るし。『いやされる』と言われます。」(島キッチンスタッフ 田中さん) 島キッチンでは毎月、“島のお誕生会”というイベントを開催しています。手作り楽器を使った演奏会や遊びのワークショップなど、観光客も参加できるイベントです。こうしたアイデアと工夫があるからこそ、たくさんの観光客が瀬戸内に集まるのです。

scene 09ほかにも理由が?

今回の疑問、「なぜ瀬戸内の島々に人が集まるの?」。「地域の課題解決」や「観光客のニーズの変化」などさまざまな視点から、その理由が見えてきましたね。ほかにも理由があるのでしょうか。いろいろな見方で、みんなで考えてみましょう。