あらすじ一覧

ヤマト王権はどうやって権力を広げた?

scene 01古代王権のなぞに迫る!

ここは、とある歴史番組の収録現場。「で、どう豊本(とよもと)ちゃん、次のネタは?」とプロデューサーの飯塚(いいづか)がディレクターの豊本に言いました。豊本は一心にテーブルの上の何かを見ています。「お、古墳か。古墳と言えば…」。「そう、巨大!」と豊本。「そして、これだけ大きなものを作るのに必要なものと言えば? そう、人を従える権力なんです。そこでズバリ! ヤマト王権はどうやって権力を広げたのか? 古代王権のなぞに迫る!…なんてどうですか?」。「いいねえ。で、理由は?」と飯塚。すると、「レキデリさんをよびますね」と豊本はさっそくレキデリに資料を注文しました。

scene 02歴史デリバリー“レキデリ”

スタジオに、「お待たせしました。“レキデリ”です~!」と、レキデリ配達員の角田(かくた)がやってきました。「今回のご注文は、ヤマト王権はどうやって権力を広げのか?についての資料ですね」「ちなみに、どんなふうに予想されてるんですか?」と聞いてきました。「単純に、戦争に強かったからとか?」と豊本。「すんごい経済力があったからとか?」と飯塚。「素晴らしい、二人とも。まずはね、自分で予想することが歴史探究の第一歩です」と角田が言います。「最初の資料は、こちらです!」。角田が取り出したのは…。

scene 03資料No.1『金借銘鉄剣』

資料番号1国宝『金借銘鉄剣(きんさくめいてっけん)』。埼玉県行田(ぎょうだ)市にある稲荷山(いなりやま)古墳から出土した鉄の剣です。剣の表と裏には、115文字の漢字が刻まれています。文字資料の少ない古代を知る上で、貴重な資料です。

scene 04剣に刻まれた文字

「今回はレプリカをご用意しました。よかったら手に取って見て下さい」と角田。剣を手にした豊本、「なんか、偉くなった気になりますねぇ。野望がふつふつとわいてきますよ」と言います。飯塚も持ってみて、「うわぁ、すごい。さびまで再現してあるんだ」と感心しています。「そうなんですよ。これ、文字が書かれているのがわかりますか? 本物には金がはめこまれていたようですよ」と角田が言います。「で、これ、何て書かれているんですか?」と飯塚が聞くと、「こちらをごらん下さい」と角田は追加の資料を取り出しました。

scene 05ワカタケル大王とは?

「お二人が見やすいように、そちらの剣を拡大したものがこちらです。剣が作られた年と、埋葬(まいそう)された人物の功績が書かれております。作られたのは、辛亥(しんがい)の年。つまり、471年と考えられております。そして裏には、埋葬された人物が、ワカタケル大王(おおきみ)を補佐していたと書かれています」と説明します。「ワカタケル大王って?」と豊本が聞くと、「ヤマト王権の王で、雄略(ゆうりゃく)天皇のことだと考えられております」と角田が答えました。

scene 06埼玉まで権力が広がっていた

「471年、ワカタケル大王、埼玉…。あ、つまり5世紀末には、埼玉までヤマト王権の権力が広まったということですね」と豊本が言うと、「ナイス読み取り! 素晴らしい!」と角田。すると、「でもどうやって権力を広げたんだ?」と飯塚が言いました。「剣ですからやっぱり武力じゃないですかね。権力の象徴として武器を入れたんですよ」と豊本。ところが今度は、「ナイス早とちり!」と角田に言われてしまいました。「あわてちゃいけません。探究はこれからですよ」と角田。

scene 07たくさんの副葬品も見つかった

「稲荷山古墳からは、剣と一緒にたくさんの副葬品(ふくそうひん)が見つかっています。こちらをごらん下さい」。角田が写真を見せました。「まず、翡翠(ひすい)の勾玉(まがたま)。そして青銅(せいどう)の鏡。刀。矢じり。斧(おの)。そしてこちら」。最後に見せたのは…。「え? ペンチ?」とおどろく飯塚。「鉄製品を作るときの工具だと考えられております」と角田。「あ、鍛冶屋さんが熱した鉄をはさむやつか」と納得する飯塚。「でも、なんで斧(おの)とか工具が? そもそも、埋葬されているのは権力者ですよね。宝石とか剣みたいに豪華なものだったらわかるんですけど…」と豊本。

scene 08材料に注目すると

すると、「材料に注目して下さい、と書いてあります」と角田が言います。「材料?」。「石、銅、鉄、鉄、鉄、鉄?」と数え上げてみる飯塚。「おお、鉄が多い」と気づきました。「ナイス読み取り!」と角田。「あ、そうか!」と豊本も気づきました。「きっと鉄は貴重だったんですよ。だから一緒に入れたんですよ。おれはこんな貴重な鉄をたくさん持ってるんだぜっていうアピールですよ!」。飯塚も、「そっか、鉄は権力の象徴だったんだ!」と同意します。「いいですねえ。探究が進んできましたよ。素晴らしい」と角田が言いました。

scene 09資料No.2『鉄鋌』

「続いての資料はこちら」。資料番号2『鉄鋌(てってい)』の写真。奈良県の古墳から出土した、鉄の延べ板です。大きさは大小2種類。総重量はおよそ140kgにもなります。奈良周辺のほかの古墳からもたくさん出土しています。飯塚と豊本に実物とほぼ同じ大きさの鉄の板が渡されます。「これ、何に使うんだろう?」。「鉄が貴重だったってことは…お金の代わり? 溶かせば武器だって作れるし」。「いずれにしてもヤマト王権は貴重な鉄をたくさん持っていた。つまり、経済も武力も盤石(ばんじゃく)だったってことだよね」と飯塚。「でも、たくさんの鉄をどうやって手に入れたんですかね?」と豊本が言うと、「ナイス、クエスチョン! いい疑問ですねぇ。こちらの資料をごらん下さい」と角田が言いました。

scene 10資料No.3『三国志魏書』東夷伝

資料番号3『三国志魏書』東夷伝(さんごくしぎしょ とういでん)』。3世紀末に成立した、中国の歴史書です。今回注目するのは、朝鮮半島南部にあった弁辰(べんしん)という地域について書かれた記述です。「何て書いてあるの?」と飯塚。「国、鉄を出す。韓(かん)、濊(わい)、倭(わ)、皆従いて之(これ)を取る」と角田。さらに説明します。「ここで言う『国』とは、韓国南部にあった弁辰のことです。そして、『韓』と『濊』は朝鮮半島のさらに別の地域。そして『倭』、これは日本を指します」。

scene 11当時の日本では鉄が作れなかった?

「鉄を出す…鉄を出す…。鉄の産地ってこと?」と飯塚。「倭が之を取る…。日本が鉄を取る…。つまり、朝鮮半島から手に入れたんですね」と豊本も気がつきました。「ちなみにこちらの資料もごらん下さい」と角田が取り出したのは、朝鮮半島南部の古墳から出土した『鉄の延べ板』です。「そっくりじゃん! でも、なんで朝鮮半島から?」と飯塚。すると豊本が、「ひょっとして、当時の日本では鉄が作れなかったんじゃないですか?」と言いました。「なるほど。だから鉄は貴重で…あっ!」。飯塚が何かに気がつきました。

scene 12資料から読み取れたことは

「古墳の出土品から見えたのは、ヤマト王権の時代、鉄は貴重なものだった」と飯塚。「中国の歴史書から見えたのは、その貴重な鉄を朝鮮半島からたくさん手に入れていた」と豊本。「結果、国は豊かになり、周辺の国々にも鉄を与えたりして優位に立った…てことなんじゃない? ヤマト王権が権力を広げられたのは」と飯塚は予想したようです。すると、「そう…かもしれませんねえ。ただ、この時代は非常に文字資料が少ないんですよね。なので、正確なところは誰にもわからないんですよ。でもそこが古代の…」。そう角田が言いかけ、「ロマンですよね~」と声を合わせて意気投合する豊本と角田でした。