あらすじ一覧

きいろいはこのみんな【よりよい学校生活、集団生活の充実/善悪の判断、自律、自由と責任】

オープニング

『もやモ屋』。それは、まぼろしの映画館(えいがかん)。みればみるほど、頭はモヤモヤ、心もモヤモヤ。さあ、ごらんあれ!

scene 01クリスマス会の劇を決める

『みんなの意見をよく聞こう』というクラス目標(もくひょう)が黒板の上にはられています。「クリスマス会でやる劇(げき)を投票(とうひょう)で決めたいと思います」とリリカがみんなに言いました。黒板には『かぐや姫(ひめ)』、『ないた赤おに』、『ごんぎつね』と書かれています。「ぜったい赤おにがいいよ」。「きつね! きつね!」。「かぐや姫おもしろそう」。みんなが口々に言います。すると先生が、「じゃあ、今日の帰りまでに投票することにしたらいいんじゃないか?」と言いました。「じゃあ、この黄色い箱に、帰りまでに投票してください」とリリカ。みんな次々に投票していきます。

scene 02多数決ってそういうもの?

黄色い箱を家に持ち帰ったリリカが、投票(とうひょう)の集計をしています。「あれ? 一票足りない」。家の中をさがし回るリリカ。リビングもさがしますが、「こっちには落ちてないわよ」と姉のエリカ。そして、「リリカの票も数えたの?」と言いました。「あ、すっかりわすれてた。投票しなきゃ」と気がついたリリカ。「でも、わたしが『きつね』に入れても、6票になって決まらないし、『かぐや姫(ひめ)』か『赤おに』に入れちゃうと、クラスの半分以上(いじょう)がやりたいと思ってないのになっちゃうし…」と投票先が決まりません。「そういうものなのよ、多数決って」とエリカが言いました。

scene 03『ないた赤おに』か『かぐや姫』か

次の日。「決選投票(けっせんとうひょう)を行います」。みんなが手をあげ、リリカが数えて黒板に書きます。『ないた赤おに』…14。『かぐや姫(ひめ)』…15。「かぐや姫で決まりね!」とよろこぶクミコ。「ごんぎつね~」。「赤おに~」。ケイスケとタクマはがっくり。すると、「あれ? リリカ、手をあげてないじゃん」とマリナが言いました。「え?」。「赤おにでいいよな?」。「リリカ、かぐや姫にしよう!」。「あいだをとってきつねってのはどう?」。みんなが口々に言います。『みんなの意見をよく聞こう』というクラス目標(もくひょう)を見上げたリリカは、「じゃあ…どっちもやります」と言いました。教室がシーン…。

scene 04タイトルは『かぐや姫となみだ鬼』

その夜、リリカは『かぐや姫(ひめ)』と『赤おに』をくっつけた脚(きゃくほん)本を書きました。つぎの日、リリカがみんなに配役を発表します。タイトルは『かぐや姫となみだ鬼(おに)』。けいこが始まりました。おきな役のケイスケが、「光る竹! わってみよう。まぁ、なんと! 小さき姫が入っておった!」。すると、「ちょっと待てよ」とおに役のタクマとミノルがわりこんできました。「まんまかぐや姫じゃないか。おにたちも平等に出せよ」ともんくを言います。「まだ始まったばかりじゃないの」とクミコが言いますが、「これじゃあ、かぐや姫のおまけになっちまうよ。なぁ、リリカ」とタクマ。「え…じゃあ、直すよ」。

scene 05脚本を書き直した

書き直した脚本(きゃくほん)でけいこ再開(さいかい)です。「光る竹! わってみよう。まぁ、なんと! 真っ青なおにが入っておる!」とケイスケ。すると、「ストップストップ! やっぱりおかしいわよ。竹からおにってなによ」とクミコ。そこへまたタクマとミノルがやってきました。「姫(ひめ)もおにもかわらないよ」。「ぜんっぜんちがうわよ!」。「話をミックスするというのはそういうことなんだよ」。やっぱりクミコとタクマたちが言いあらそいになります。するとクミコがリリカに近づいて、「もっとほかにやりようがあるじゃないってことよ。ね、リリカ」と言いました。「え?」。

scene 06黄色い箱にアイデアを入れてもらう

ふたたび書き直された脚本(きゃくほん)でけいこです。ケイスケが二つの竹をわり、「まぁ、なんと! 右手からは姫(ひめ)、左手からはおに!」。すると、「ちょっと待った!」とクミコとタクマが同時に言いました。「そういうことじゃないのよねぇ」。「ちがうんだよなぁ」。そう言われてもリリカは…。その日の帰りの会。「この黄色い箱に、どうしたらいいかアイデアを入れて下さい」とリリカが言いました。家でみんなのアイデアを整理するリリカですが…。『どちらの話も平等に入れて下さい』。『おには日本語で話さないほうがいいと思います』…。「日本語で話さないって、どうしたらいいの?」と頭をかかえます。

scene 07また書き直した脚本でけいこ

また書き直した脚本(きゃくほん)でけいこです。「かぐやや」とおきな。「はい、ただいま」。かぐや姫(ひめ)が上手(かみて)から出てきました。「あれがうわさのかぐや姫か」。「なんと美しいことだ」と村人たち。そこへ、「ぎゃおぎゃおぎゃーお。ぎゃぎゃ」、「ぎゃぎゃ? ぎゃーお」と赤おにと青おにがあらわれました。「キャーっ、おによ!」とにげだす村人。すると、「待った待った! こんなわけわからないのダメよ!」とまたクミコがとめました。「わかった。こうしよう。わたしが歌をうたうから、かぐや姫出てきて」とクミコ。「勝手にかえちゃダメよ。アイデアは黄色い箱に入れなくちゃ」とマリナが言います。

scene 08みんな勝手なことを言い出して…

「リリカちゃん、ちょっと」とハルナがリリカをろうかへつれだして言いました。「わたし、本当は目立ちたくなくて…。顔を見せるのもいやなんだけど」。教室では、「なんでクミコがうたうんだよ」。「そっちのほうがはなやかだからよ」。「うたいたいだけだろ」。タクマとクミコがいいあらそっています。「アイデアは黄色い箱に」とマリナ。いしょう係のレイコがろうかに出てきました。「リリカ、いしょうのことなんだけど。おにって赤と青だけ? なんかダサくない?」と言います。「え?」。「あと、アクションシーンが必要(ひつよう)だと思う」。そこへ顔を出したマリナ、「アイデアは黄色い箱に」。

scene 09みんなの意見を取り入れた

夜、リリカがみんなのアイデアをチェックしています。『歌も入れて下さい』。『おにの言葉に通訳(つうやく)をつけて下さい』。『かぐや姫(ひめ)の顔は出さないで下さい』。『ピンク色のおにも出して下さい』。『アクションシーンも入れて下さい』。ますます頭をかかえるリリカ。次の日のけいこでは、「♪さぁ、もう、時間よ。かぐや姫~」。月の使者役のクミコがうたいます。「帰るんじゃな、かぐや姫」とおきな。「はい。たいへんお世話になりました」とマスクで顔をかくしたかぐや姫。そこへ赤おにがあらわれました。「ぎゃおー、ぎゃおー、ぎゃぎゃおー」。「青おに~、青おに~、どこだー」と通訳がついています。

scene 10「ごんぎつねを出してくれよ」

そこへピンクおにがあらわれました。「ぎゃーおぎゃーお。ぎゃぎゃがぎゃがぎゃが」。「まて、かぐや姫(ひめ)。月に帰る前にわたしと勝負しろ!」と通訳(つうやく)が言います。「♪なんだか~おにが、集まってきているわね~」とうたう月の使者。するとケイスケが、「リリカ、ちょっと」と話しかけてきました。「おれ、実はおきなの役、いやなんだ」。「え?」。「『ごんぎつね』が大すきなんだよ!」。「え?」。「ちょっとでいいからごんぎつねを出してくれよ。ごんがうたれちゃう、あの名場面だけでいいからさ」と言うのです。すると、「意見は黄色い箱に」とマリナ。

scene 11みんなの意見にぐったり

その夜、家で、黄色い箱の中の意見を読むリリカ。『ほんの少しでよいのでごんぎつねを入れて下さい』。『月の使者は宇宙(うちゅう)から来た宇宙人がいいと思います』。『かぐや姫(ひめ)にお面をつけて下さい』。『さいごに全員のしょうかいを入れて下さい』。『村人のいしょうをもっとはでにしてほしい』。『漢字にふりがなをふって下さい』…。ソファにすわり、黄色い箱をかかえてぐったりしてしまうリリカ。こんなゆめを見た…。

scene 12かぐや姫とおにがゆめの中へ

夜の竹林。まるで舞台(ぶたい)の上のように、お面をつけたかぐや姫(ひめ)が出てくる。「たいへんお世話になりました」。おきなとおうなも出てくる。「ばきゅーん!」。ピストルをうったおきなはきつねの顔をしている。「ごん、おまえだったのか!」。おにがあらわれる。「ぎゃおぎゃおぎゃー(おれもふつうにしゃべりたいよ)」。「じゃおじゃお(そうだそうだ!)」。「ぎゃぎゃ~ん!(えいや!)」。月の使者があらわれてうたう。「♪月をながめて~ぎゃおぎゃおなんてなかないで~。だっておかしいもの~。このさい、意見するけど~」。黄色い箱をかかえ、「意見は黄色い箱に」と月の使者に言うリリカ。

scene 13「みんなの意見聞いてくれるんだよね?」

ふとふりむくと、みんながまわりをかこんでいる。月の使者の歌がつづく。「♪へんなの、へんなの、へんなのよ~。おにもピンクになっちゃうくらい~。月に帰したいだけなのに~。黄色い箱はまどわせる~」。歌に合わせてみんなはリリカのまわりを回りだす。「きつね! きつね!」。「アクションシーンが必要(ひつよう)だと思う」。「ちがうんだよなぁ」。…「みんなの意見聞いてくれるんだよね?」。みんなに言われた言葉が次々に出てくる。黄色い箱をかかえたリリカの心は、モヤモヤ…。