あらすじ一覧

scene 01「今は昔、竹取の翁といふものありけり」

「今は昔、竹取の翁(おきな)といふものありけり。野山にまじりて竹を取りつつ、よろづのことに使ひけり。名をば、さぬきの造(みやつこ)となむいひける。その竹の中に、もと光る竹なむ一筋(ひとすぢ)ありける。あやしがりて、寄(よ)りて見るに、筒(つつ)の中光りたり。それを見れば、三寸(さんずん)ばかりなる人、いと美しうてゐたり」。

scene 02「かぐや姫」のお話

これは、「かぐや姫(ひめ)」が出てくる有名な昔話です。お話の名前は『竹取物語』。だれが書いたのかよくわかっていませんが、なんと、日本でいちばん古い物語だといわれています。この物語が書かれた、今から千年以上前の平安時代。当時は印刷機(いんさつき)もコピーもないので、おもしろい物語は手で書き写して、一さつの本をみんなで読んでいました。『竹取物語』も、こうして一文字一文字書き写されて、千年の時をこえて今につたわっているのです。物語が始まる場面を、今の言葉で聞いてみましょう。

scene 03光る竹を切ってみると…

「かつて、竹取の翁(おきな)と呼(よ)ばれている男がいました。野や山に分け入っては竹を取ってきて、様々に細工をして生計をたてていました。名は、さぬきの造(みやつこ)といいます。ある日彼(かれ)は、根元から光を放っている竹を一本、見つけました。いったい何だ、と思って近づいてみると、筒(つつ)の内側(うちがわ)が光っているのでした。切ってみました。すると、十センチにも満(み)たない小さな人が、じつにかわいらしい様子で光のなかにすわっているのでした」〔『竹取物語』江國香織 より〕

scene 04かぐや姫の正体

かぐや姫(ひめ)は、なぞを秘(ひ)めたまま、おじいさんとおばあさんに大切に育てられます。そして、物語の後半、おどろくべき正体が明かされます。かぐや姫は人間ではなく、月の都の人だったのです。ある満月(まんげつ)の晩(ばん)、月からむかえが来ることになります。おじいさんたちは、愛(あい)するかぐや姫をわたすまいと、たくさんの兵隊(へいたい)で守ろうとしました。

scene 05空から人が下りてきて 

「かかるほどに、宵(よひ)うち過(す)ぎて、子(ね)の時ばかりに、家のあたり、昼の明(あか)さにも過ぎて、光りたり。望月(もちづき)の明さを十合はせたるばかりにて、在(あ)る人の毛の穴(あな)さへ見ゆるほどなり。大空より、人、雲に乗りて下(お)り来て、土より五尺(ごしゃく)ばかり上がりたるほどに立ち連(つら)ねたり。内外(うちと)なる人の心ども、物におそはるるやうにて、あひ戦(たたか)はむ心もなかりけり。嫗(おうな)いだきてゐたるかぐや姫(ひめ)、外(と)にいでぬ。えとどむまじければ、たださしあふぎて泣(な)きをり。

scene 06満月を十合わせた明るさ

「そうこうするうち、宵(よい)は過(す)ぎて真夜中になりました。翁(おきな)の家のあたりが、真昼よりもあかるい光に満(み)ち、まるで満月(まんげつ)のあかるさを十あわせたようなありさまになりました。居(い)わせた人の毛穴(けあな)まで見えたほどです」。

scene 07月からのむかえ 

「大空から人々が、雲に乗っておりてきて、地面から五尺(ごしゃく)ほど浮(う)いたところにふわふわとならびます。これを見ると、家のなかにいた人も外にいた人も心が何かに呪縛(じゅばく)されたようになり、戦(たたか)おうとする気持ちもなくなっていました。翁の妻(つま)は、抱(だ)きしめていたかぐや姫(ひめ)がするりと抜(ぬ)けでてしまったので、とてもひき止めることができず、ただ仰(あお)ぎ見て泣(な)いています」。

scene 08月の光のふしぎな力

かぐや姫(ひめ)の家をてらした満月(まんげつ)10こ分の光。どのぐらいの明るさだと思いますか。月の明るさの感じ方は、今と昔では、ずいぶんちがったのかもしれないのです。今は、一年中、真夜中でも町には光があふれています。でも平安時代は電気などなかったので、夜になるとあたりはやみにおおわれました。何も見えないほどの暗さです。しかし、ひと月に何日間か、月の出る夜だけはちがいました。やみは消え去り、世界はまばゆくてらされました。月の光にはふしぎ力がある…昔の人のそんな思いが、このお話を生んだのかもしれません。