あらすじ一覧

徒然草(兼好法師)

scene 01つれづれなるままに…

「つれづれなるままに、日くらし硯(すずり)にむかひて、心にうつりゆくよしなし事(ごと)を、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ」――たいくつでたいくつで仕方がないから、一日中すずりに向かって、心にうかんだ取りとめのないことを、何となく書きつけていると、なんだかふしぎで、おかしな気分になってくるんだ…。

scene 02鎌倉時代のエッセイ集

この有名な冒頭(ぼうとう)文で始まる『徒然草(つれづれぐさ)』という古典(こてん)作品。作者の兼好法師(けんこうほうし)は、鎌倉(かまくら)時代の終わりごろ、京都に生まれました。『徒然草』は、兼好法師が日々の生活の中で感じたことを、独自(どくじ)の視点(してん)で、時にはするどく、時にはおもしろおかしく書きつづったエッセイ集です。

scene 03友とするにわろき者

「友とするにわろき者、七つあり。一つには、高くやんごとなき人。二つには、若(わか)き人。三つには、病(やまひ)なく身(み)強き人。四つには、酒を好(この)む人。五つには、猛(たけ)く勇(いさ)める兵(つはもの)。六つには、虚言(そらごと)する人。七つには、欲(よく)深き人。よき友三つあり。一つには、物くるる友。二つには、医師(くすし)。三つには、知恵(ちえ)ある友。」

scene 04友だちにしたくないタイプと

「友だちにするのに悪い人は、七つのタイプがある。一つめは、身分が高くてセレブな人。二つめは、年がわかい人。三つ目は、病気知らずですごく健康(けんこう)な人。四つめは、酒ずきの人。五つめは、強くていさましい武士(ぶし)。六つめは、うそをつく人。七つめは、欲(よく)が深い人、である。いい友だちには、三つのタイプがある。一つめは、気前よく物をくれる友だち。二つめは、お医者さん。三つめは、知恵(ちえ)があってかしこい友だち、なのだ。」

scene 05兼好法師のつぶやきエッセイ

わかいころの兼好は、天皇に仕え、宮廷(きゅうてい)ではたらいていました。しかし兼好は権力(けんりょく)あらそいに明けくれる宮廷に見切りをつけ、30歳(さい)くらいのときに出家(しゅっけ)、つまり、仕事も家もすててお坊(ぼう)さんになってしまいます。小さないおりにこもった兼好は、ひまつぶしに、日々経験(けいけん)したことや考えたことについて書きつづるようになりました。今でいうブログやツイッターのつぶやきのようなエッセイです。のちに、このつぶやきエッセイを集めたのが、『徒然草』です。

scene 06高名の木登りといひしをのこ…

「高名(こうみょう)の木登りといひしをのこ、人をおきてて、高き木に登せて梢(こずえ)を切らせしに、いと危(あや)ふく見えしほどは言ふ事もなくて、おるるときに軒長(のきたけ)ばかりになりて、『あやまちすな。心しておりよ』と言葉をかけはべりしを、『かばかりになりては、飛(と)びおるるともおりなん。いかにかく言ふぞ』と申しはべりしかば、『その事に候(さふらふ)。目くるめき、枝(えだ)危ふきほどは、おのれが恐(おそ)れはべれば申さず。あやまちは、やすき所になりて、必(かなら)ず仕(つかまつ)る事に候』といふ。あやしき下郎(げらふ)なれども、聖人(せいじん)のいましめにかなへり。」

scene 07木登り名人の意外なアドバイス

「木登りの名人といわれた男が、人を指図して、高い木に登らせて枝(えだ)を切らせた時のことだ。高くてすごくあぶない作業のあいだは名人は何も言わないのに、おりてきて、軒(のき)の高さくらいにひくくなった時に、『足をふみはずすんじゃないぞ。注意しておりろよ!』と声をかけた。だから、『これくらいの高さだったら、とびおりてもだいじょうぶだろうに、なぜそんなことを言うんだ?』と聞いてみた。」

scene 08失敗は何でもないところで起こすもの

「すると名人は、『いやいや、そうなんですよ。高くて目がくらんで、枝(えだ)がおれそうであぶないときは、本人も慎重(しんちょう)ですから、わたしが注意する必要(ひつよう)はありません。失敗(しっぱい)というものは、決まって、何でもないところでかならずやらかすもんなんですよ』と答えた。この名人は地位(ちい)も教養(きょうよう)もない男だが、言うことは、徳(とく)の高い人の教えとまったく同じだったのだ。」

scene 09今とかわらない人々の様子

『徒然草』には、244のエッセイがおさめられています。ふざけてかぶったなべが取れなくなったお坊(ぼう)さん。もらった遺産(いさん)を全部、イモを買うのに使ってしまったお坊さん。ペットの犬を怪獣(かいじゅう)とまちがえ、おどろいて川に落ちた男…。『徒然草』に登場する人々は、今と少しもかわらず、生き生きとしています。だから、今でも読む人をひきつけるのです。――「つれづれなるままに、日くらし硯にむかひて、心にうつりゆくよしなし事を、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ」