あらすじ一覧

歌舞伎「勧進帳」

scene 01武蔵坊弁慶の活躍

みなさんは、武蔵坊弁慶(むさしぼう べんけい)という人を知っていますか。今日はこの弁慶が大活躍(だいかつやく)する歌舞伎(かぶき)、『勧進帳(かんじんちょう)』をしょうかいします。登場人物は、主人公の武蔵坊弁慶。その主君(しゅくん)の源義経(みなもとのよしつね)。そして、関守(せきもり)の役人、富樫左衛門(とがしのさえもん)です。

scene 02主君義経をにがしたい弁慶

山伏(やまぶし)に変装(へんそう)し、主君(しゅくん)義経を関所(せきしょ)からにがそうとする弁慶。おたずね者だとばれないよう荷物持ちに変装する義経。そして、二人をうたがう関所の名役人、富樫。富樫は、「本当に山伏ならば勧進帳を読んでみろ」と弁慶にせまります。勧進帳というのは、関所の通行証(しょう)のようなもの。ところが弁慶はニセ山伏ですから本物を持っていません。弁慶が持っていたのは、何も書いていないニセ物。弁慶はこれを、あたかも書いてあるかのように朗々(ろうろう)と読み上げて、ピンチを乗り切ろうとします。

scene 03弁慶のおどろくべき作戦

ニセの勧進帳を読むふりをして、うまく関所(せきしょ)の役人をだました弁慶。しかし、一難(いちなん)去ってまた一難。家来(けらい)が富樫に、「荷物持ちの男があやしい。義経にちがいない」と耳打ちします。「そこの荷物持ち、待て! おまえが義経だな!」。しまった、ばれたか! そのとき弁慶は、義経のピンチをすくうためおどろくべき作戦(さくせん)に出ます。「うぬぬ、えい! えい!」。つえで主君(しゅくん)の義経を打ちすえたのです。「おまえは荷物持ちのくせにふらふら歩くからうたがわれるのだ! 早く行け、消えうせろ!」。

scene 04「いっそここでころしましょうか」

しかし、「どんなことをしようが、その荷物持ちは通さんぞ!」と富樫たち。「ははあ、あなたがそんなに引き止めたいのは、実はこいつがせおっている荷物が目当てなんでしょう。あなたのほうこそぬすっとのようだ!」と弁慶。「なにお!」。「むむむむ!」。にらみ合う双方(そうほう)。すると弁慶は、「これほど言ってもうたがうなら、この男を荷物といっしょにあずけますから、われわれだけでも通してください。それともいっそここで、こいつをころしましょうか」と言い出します。

scene 05主君を思う気持ちにうたれて

すると、「あぁ、この者はそうまでして主君(しゅくん)を守ろうというのか。今、この人たちをころしてはいけない。たとえわたしがどんな責任(せきにん)に問われようとも」と富樫は考えます。「早まってはいけません。もしその男が義経なら、あんなになぐったりすることはできないはず。家来(けらい)の見まちがいでした。今はうたがいも晴れました。どうぞお通りください」と言って富樫は義経たちを通すのでした。…「今は疑ひ(うたがい)晴れ候ふ(そうろう)。とくとくいざなひ(い)通られよ」。

scene 06弱い立場の人を助ける心

杖(つえ)で家来(けらい)が主人を打つなど、だんじてゆるされることではありません。でも、弁慶は主君(しゅくん)義経のために懸命(けんめい)のはたらきをします。富樫は、懸命にはたらいたのに不幸に見まわれた判官(ほうがん)義経に同情(どうじょう)し、弁慶の忠義(ちゅうぎ)に感動し、助ける決心をしました。「判官贔屓(ほうがんびいき)」という言葉があります。『勧進帳』には、義経のような弱い立場の人を贔屓(ひいき)して助けようという“日本人の思いやりの心”がこめられているのです。

scene 07歌舞伎の特別な演技「見得」

歌舞伎(かぶき)は江戸時代に始まり、400年以上の歴史(れきし)を持つ演劇(えんげき)です。歌舞伎には、ほかの演劇にはない特別(とくべつ)な演技(えんぎ)があります。たとえば、「見得(みえ)」。見得を切る、という演技で、観客(かんきゃく)の視線(しせん)が役者に集まります。

scene 08歌舞伎の特別な演技「六方」

そして、「六方(ろっぽう)」という、退場(たいじょう)するときの特別(とくべつ)な歩き方の演技(えんぎ)。「六方」というのは、手足を、東・西・南・北・天・地の六方向に動かして、「はてまでとどけ!」という思いで義経一行を追いかけていく、“引っこみ”の演技です。…いよいよ、『勧進帳』のフィナーレです。