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「四捨五入」の心理トリックに気をつけろ ~がい数~

オープニング

オープニングタイトル

scene 01『四捨五入して1ページ2万円』

うす暗いオフィスで、女が鼻歌をうたいながら封筒(ふうとう)からお金を出してながめ、ニヤリと笑いました。目の前のボードにはられた紙には、『四捨五入(ししゃごにゅう)して1ページ2万円』と書いてありました。

scene 02原稿料が横領された?

さんすう課でイチがマンガを読んでいます。東海林健(しょうじ・けん)の新作『おんがく刑事ドレミ』です。そこへ、主任(しゅにん)からの指令です。「ゼロ、イチ、事件(じけん)よ。出版(しゅっぱん)社で横領(おうりょう)のうたがいがあるわ。『音楽刑事ドレミ』の作者、東海林健さんから通報(つうほう)が入ったの。東海林さんによると、編集(へんしゅう)者である山本知恵(やまもと・ちえ)が原稿(げんこう)料をひそかに横領しているというのよ」。横領とは、会社のお金をぬすんでいるということです。「出版社に行くぞ!」。

scene 03原稿料は“イチキュッパ”

「会社のお金を横領(おうりょう)? そんなのでたらめです!」。知恵がゼロに言いました。『四捨五入して1ページ2万円』という紙を見たゼロが「これは?」と聞くと、「マンガ家にしはらう原稿(げんこう)料の社内の決まりです。うちでは四捨五入して2万円になる金額(きんがく)と決まっているんです」。四捨五入とは、数字の4以下を切りすてて、5以上を切り上げることです。社長によれば、知恵はつねに会社の決まりである『四捨五入して2万円』、“イチキュッパ”でおさえてくれているのだそうです。ゼロは“イチキュッパ”を手帳に書きとめました。「19800円か…」。

scene 04「1ページ15000円しかもらえなかった」

出版(しゅっぱん)社の廊下(ろうか)でイチは、ぶつぶつつぶやきながら歩いている男とぶつかりました。それはマンガ家の東海林健でした。さんすう課で東海林の話を聞くことにします。東海林が言うには、知恵が東海林をだましているというのです。「山本さんはうそつきなんです。原稿(げんこう)料は1ページおよそ2万円と聞きました。合計100ページかいたから、200万円もらえると思ったのに、実際(じっさい)には150万円しかもらえなかった。計算すると、1ページ15000円です」。

scene 05『およそ2万』はうそではない

「しかし15000円は四捨五入すると2万円です。会社の決まりで、原稿(げんこう)料は四捨五入して2万円と決まっているそうです」とゼロ。「イチ、千の位で四捨五入して2万になる数字の範囲(はんい)は?」とゼロが聞きました。「15000から、24000」と答えるイチ。するとゼロは、「図をかいて確認(かくにん)してみよう」とタブレットを開きました。図をかいてみると、正しくは「15000から24999」が範囲でした。「15000は範囲内だから、残念ながら、『およそ2万』という山本さんの言葉はうそではありません」とゼロ。

scene 06四捨五入を守ってイチキュッパ?

すると東海林は、「まだおかしな点があるんです。これを見てください」と、原稿(げんこう)料がふりこまれた記録を見せました。ふりこみの名前が、出版(しゅっぱん)社ではなく山本知恵となっているのです。「それに山本さんは、『およそ2万円、たとえばイチキュッパ』って言ったんです。イチキュッパ、19800円と言われて、まさか15000円だとは思いませんよ!」。ゼロは社長の言葉を思い出しました。『つねに会社の決まりである四捨五入を守って、イチキュッパ』。ゼロがひらめきました。「なるほど! 不正のトリックがわかったぞ!」。

scene 07どこの位で四捨五入かによって

オフィスで山本知恵が鼻歌をうたいながら封筒(ふうとう)のお金を見ているところへゼロたちがあらわれました。あわててしまいこんだお金の一部が引き出しからのぞいています。「これを見てもらえますか」。ゼロがタブレットを広げました。千の位で四捨五入すると2万になる数の範囲(はんい)が表示(ひょうじ)されています。15000から24999です。次にゼロが見せた図は、百の位で四捨五入すると2万になる数字の範囲です。19500から20499です。どこの位で四捨五入するかによって、同じ『およそ2万』でもこんなにちがうのです。

scene 0815000円は四捨五入すれば2万円だが…

ゼロが言います。「東海林先生はあなたから『およそ2万円。たとえばイチキュッパ』と聞いたので、百の位で四捨五入する数のほうを思いえがきました。ところが実際(じっさい)にしはらわれたのは、千の位で四捨五入する数の最も少ない15000円でした」。すると知恵は、「先生が勝手にかんちがいしたんです。15000円は四捨五入すれば2万円になるわ。わたしはうそはついていないわ」と言い返しました。「先生に対してはね。しかし社長に対してはどうでしょうか」とゼロが言いました。

scene 09差額の48万円は?

イチが、社長から借りてきた領収(りょうしゅう)書を見せます。金額(きんがく)は、19800円×100ページ、198万円です。しかし東海林にしはらわれたのは150万円です。「差額の48万円はどこへ行ったんでしょう。引き出しの中の封筒(ふうとう)に入っているんじゃないんですか!」とゼロか言います。「あなたは四捨五入の心理トリックを利用し、不正に会社のお金をぬすんだ。社長からイチキュッパ、19800円の100ページ分、198万円の原稿(げんこう)料を受け取り、東海林先生には150万円しかはらわなかった。こうやって、残りの48万円をだまし取ったんです!」。

scene 10「少しならゆるされるという犯罪はない」

ゼロが続けます。「これは四捨五入を巧妙(こうみょう)に利用した、悪質(あくしつ)な犯罪(はんざい)です!」。東海林もおこって言いました。「何日も徹夜(てつや)してかき上げたんやぞ!」。すると知恵が開き直って言い返しました。「いいじゃない! マンガ家は人気が出ればもうかるんだから。少しくらいもらったって!」。するとゼロが静かに言いました。「少しならゆるされるという犯罪はありません。罪(つみ)は正確(せいかく)につぐなってもらいます」。がっくりとうなだれる知恵でした。