あらすじ一覧

なんであんな話し方するの?~きつ音

オープニング

(オープニングタイトル)

scene 01ようこそ、ゆめの世界へ

「アイちゃーん!」。「アイちゃん! 起きて!」。シッチャカとメッチャカがアイを起こしています。目をさまして、「うわっ!」とおどろくアイ。「ようこそ、ゆめの世界へ」とシッチャカとメッチャカ。「え? え?」。わけがわからないアイに、「ここは、なやみをかかえた子どもがまよいこむゆめの中」とメッチャカが言います。「なやみ?」。「何か相談したいこと、あるんでしょ?」とシッチャカ。「うん!」。「じゃあ、それを歌にのせてきかせて」とメッチャカが言うと、「よいしょ」とシッチャカがピアノを取り出しました。「え?」。「サン、ハイ!」。

scene 02アイのなやみは…

アイが歌います。「♪転校生のユウくんは 話し方がちょっと変わってるんだ 『ぼ、ぼ、ぼ、ぼくは、や、や、野球を習っています。やー野球のグラウンドに行くまで、じゅ、じゅ、15分、じー自転車でかかります』 みんなはそれで笑うけど わたしはちっとも面白くない グループワークだと なんにも発言しなかったり もっとちゃんとやってほしい!♪」。

scene 03“ココロのでんわ”で聞いてみよう

「へぇー。ユウくんって、ひょうきんな子なの?」とメッチャカ。「わかんないけど、みんなが笑ってると笑ってるから、わざとだと思う!」とアイ。すると「そんじゃ、わかんないことはちょくせつ聞いちゃおう」とシッチャカが電話機を取り出しました。「なに、これ?」とアイ。「相手のことを思いうかべて受話器を持つと…」。「その人のココロとつながって、何でも心の声で本当のことを答えてもらえる“ココロのでんわ”!」とシッチャカとメッチャカが言いました。

scene 04「話したいのにうまく言葉が出ないんだ」

さっそくアイは電話します。「もしもし、ユウくん?」。「うん」。「アイだけど、質問(しつもん)いい?」。「なあに?」。「どうしてああいう話し方するの? 『ぼ、ぼ、ぼ、ぼく』とか、『ぼーくは』とか。もしわざとやってるなら…」と言いかけると、「わざとじゃない!」とおこったようにユウが言いました。「え?」。「ぼく、話したいのにうまく言葉が出ないんだ。しゃべり出そうとしても、言葉につまって、ああいうしゃべり方になるんだ」とユウ。「でも、二人で体育のかけ声かけるときも言えてたし、歌を歌うときもすらすら…」とアイが言いかけると、「言葉が出てくるときと出てこないときがあるんだ」とユウが言いました。

scene 05ぼくだってみんなと同じように話したい

「けど、みんなが笑ったときもうれしそうに見えたけど?」とアイ。「ホントは笑ってもらいたくない。でも、そういうこと言うときらわれるかと思って」とユウ。「じゃあ、グループワークで発言しないのって」。「ぼくが話すとみんなが笑うから。それに、話し出そうとしてもうまく言葉が出てこなくて。言いたいことはいっぱいあるよ。ぼくだってみんなと同じように話したいんだ」。するととつぜん「そうだよね~」という声がして、歌が聞こえてきました。「♪もっと知ったら広がるよ もっと知ったら変われるよ ジローはかせの豆知識〈まめちしき〉♪」。

scene 06ジローはかせのアドバイス

テレビのスイッチが入ってジローはかせが画面にあらわれました。「ユウくんのように、しゃべるときにうまく言葉が出せない症状(しょうじょう)を、『きつ音(おん)』と言うんじゃよ」とジローはかせが言います。「きつ音?」とアイたち。「そう。きつ音は、話し言葉がなめらかに出ない症状のことでね、世の中の100人に一人はこの症状があるといわれておるんじゃよ」。「へぇー」。「ふだんは一見スラスラ話せているように見えても、きんちょうしたり、言いかえができない言葉のときに、言葉が出なくなる人もいるようじゃ」とジローはかせが言いました。「言いかえって?」とシッチャカ。

scene 07ほかの言葉に言いかえられるときは

「たとえば、朝はなんてあいさつする?」と聞かれ「え、『おはよう!』?」とメッチャカ。「ほかの言い方はできるかな?」。「えっと、『おっはー!』とか?」とアイ。「グッドモーニング!」。「そうそう、それが言いかえじゃ。だからそういう人は、ほかの言葉に言いかえてもいい状況(じょうきょう)だとなめらかに言葉が出やすいらしい。でも、日直の号令や教科書を読むなど、言う言葉が決まっている場合は、言いづらいそうじゃ」。「うん。自己しょうかいで名前を言うのが言いづらいときもあるよ」とユウ。「え? 自分の名前で?」とシッチャカ。「あぁ、名前って、ほかの言葉で言いかえられないもんね」とアイ。

scene 08きつ音と向き合って仕事をしている人たちも

「きつ音でつまずくところは、人によってそれぞれちがうんじゃよ。でもね、世の中には自分の症状(しょうじょう)とうまく向き合って、いろいろな仕事についているきつ音の人もおるんじゃよ」とジローはかせが言います。「えっ?どんな仕事ですか。ぼく、話すの好きだけど、人と話す仕事にはつけないかなってあきらめてたんです」とユウ。「たとえばアメリカの大統領(だいとうりょう)やイギリスの王様、歌手だっているし、アナウンサーもおる」。「えーっ! 人前で話す機会が多いのに、すごい!」とアイ。「もちろん、苦労はしたんじゃろうが、りっぱにやっとるんじゃよ」。「そうなんだ」。ユウもうれしそうです。

scene 09話し方ではなく話す内容に注目を

「きつ音のこと、少しはわかってもらえたかな? ちなみにきつ音への勝手なイメージで、話すのがつらそう、大変そう、と思ってしまいそうだが、きつ音の人が話すのが本当に大変だったら、話すことをあきらめてしまうんじゃないかのぅ。話そうとしているってことは、伝えたいことがあるということ。話し方ではなく、話す内容(ないよう)に注目して言葉のキャッチボールをしてみてほしいなぁ。さらばじゃ!」。そう言って、ジローはかせは消えてしまいました。

scene 10つらいのは笑われたりまねされたりすること

アイがユウに言いました。「そうなんだね。わざとやってるわけじゃないし、あれがユウくんの話し方なんだ」。「うん」。「ユウくんも、言葉がうまく出てこないことはつらいと思わない?」とメッチャカがたずねると「ぼくにとってのふつうだから。つらいのは、言葉が出てこないときに、笑われたりまねされたりすることのほうかな」とユウが言います。「そっか…」とアイ。「わざとじゃないことを笑われるのはつらいよね」とシッチャカも言います。「ユウくん、誤解(ごかい)してごめん!」とあやまるアイ。「ううん」。

scene 11「見守ってもらえるとうれしい」

「これからは、ユウくんの力になるね。言葉につまっているときに、きっとこういうことが言いたいんだろうなって感じたら、わたしが先に言ったりとか」。するとアイの言葉をさえぎるように、「あの…言葉の先取りも、悲しいかな」とユウ。「え?」。「ぼくは、自分が言い終わるのを待っててほしい。ぼくのしゃべり方、気になっちゃうかもしれないけど、ぼくは、しゃべり方よりもしゃべった内容(ないよう)を受け止めてほしい」。「うんうん」。「あと、『ゆっくり』とか『落ち着いて』って言われるのもあせっちゃうことがあるから、見守ってもらえるとうれしいかな」とユウが言いました。「わかった!」。「ありがとう」。

scene 12きんちょうして話せないことはだれにでもある

受話器を置いたアイが、「たしかになぁ」とつぶやきました。「何が?」とシッチャカ。「わたしも、クラスのみんなで話し合ってるとき、きんちょうして話し出せなかったことがあったんだ」とアイが言います。「シーンとなったら、ほかの子が『もうアイちゃんいいから、○○話せ』って言って、結局わたし話せなくて…。あれ、つらかったの思い出してさぁ」。「言いたいことがあるのに、言えないのは苦しいよねぇ」とメッチャカも言います。「そうだよねぇ」。

scene 13ちゃんと意見を聞いてみよう

『レクリエーションで何をする?』という議題で、グループで話し合っています。「おにごっことか?」。「サッカーとか?」。ユウはだまって下を向いています。男子がユウに「さっきから何も言ってないけど、ユウは何かアイデアないの?」と言いました。「また考えてないんでしょ」。するとアイが言いました。「そんなことないよ、ちゃんと聞いてみよう。ユウくん、どう?」。ゆっくりとユウが話し始めます。「ダ、ダ、ダ、ダンスは? み、みんなで、たー楽しめると、思うけど」。すると「なんだよ、ちゃんと考えてる」と男子。「賛成(さんせい)!」。「決まり~!」。うれしそうなユウ。アイもうれしそうです。