香取神宮で創始された古武術の源流・香取神道流
千葉県の香取神宮でおよそ600年前の室町時代に創始した天真正伝香取神道流。現存する日本最古の武術流儀とされ、入門する者は血判を押す。剣術を主体とした総合武術で、現代まで続く様々な古武術の源流とされる。
香取神道流師範・京増重利が語る型の重要性
その技を今に伝えるのが、香取神道流師範・京増重利。幼い頃から香取神道流の修行を積み(15歳で血判)、50年以上にわたり剣を振るってきた。戦国時代から伝わる香取神道流の型の重要性を語る。
香取神道流の型は「人間の頭では考えられない、改善の余地がない型」
「型は香取神宮の経津主大神から授かったものだと言われています。どう考えても人間の頭で考えたような型ではない、改善の余地がない、これ以上のものはないという形だと、稽古すればするほど痛切に感じます」
「表之太刀」という型には甲冑の隙間を狙い、致命傷を与える技が多数含まれている
ここで剣術の型を詳しく見てみよう。「表之太刀」といわれる型には、一連の動きの中にさまざまな攻撃が入っている。全部で30手を超えるやり取りの中で甲冑の隙間を狙い、致命傷となる技が次々と繰り出されている。
甲冑の帯→籠手→袈裟と、急所を突く無駄のない動きを型で体に叩き込む
右の人に注目。まず急所である甲冑の帯の部分を狙い、次は急所である籠手の内側、最後に急所である袈裟を斬っている。真剣でわずかに触れれば相手の戦闘力を奪う急所を突いて斬る無駄のない動きを型で体に叩き込む。
関西大学教授アレキサンダー・ベネットが剣術と現代の剣道を比較して型の意味を解説
香取神道流の型に込められた意味を関西大学教授アレキサンダー・ベネットさんが現代の剣道と比較しながら解説。「剣道は決まったところを打つけど、剣術では甲冑を着けているところを打ったって相手を倒せません」
関西大学教授アレキサンダー・ベネットが解説「剣術はすき間を狙う」
「剣術では鎧とか着けてないすき間を狙う。例えば相手がかかってくると、わきのところを斬ったり、膝の内側とかね。色々なところから隙間を狙って、目とか防具で守られていないところを狙う」
関西大学教授アレキサンダー・ベネットが解説「剣術は戦場を想定し低い姿勢で」
「もうひとつ大きな違いは低い姿勢をとること。現代の剣道は瞬発力とスピード重視のため、かかとを浮かせてつま先で立つ。神道流では戦場を想定し、足場が悪くても刀を振れるように、かかとまで地面につけて立つ」
KAMIWAZA「抜附之剣」極意①飛躍しながら刀を抜き空中で斬りつける
KAMIWAZAは京増師範の「抜附之剣」。極意①上方に飛躍しながら刀を抜き空中で斬りつける。気の遠くなるような鍛錬が空中の素早い動きでも崩れない体を作り上げた。
KAMIWAZA「抜附之剣」極意②不利な状況でも抜刀し生き残る
極意②どんな状況でも抜刀し生き残る能力。「日本は武家文化の時代が長かった。香取神道流を学ぶことでその時代のことがわかったりするので、今後も日本文化継承のため長く続けていきたいと思います」と京増さん。
古武術の源流!?香取神道流における戦場で急所を突く型の重要性
明鏡止水〜武のKAMIWAZA〜
現存する日本最古の武術流儀「天真正伝香取神道流」は、剣術を主体とした総合武術であり、現代まで続く様々な古武術の源流とされている。室町時代に創始され、甲冑の隙間など急所をねらう実践的な“型”は、「剣道」とは決定的に違う。現代に伝わる“KAMIWAZA”をひも解き、その神髄について、関西大学教授アレキサンダー・ベネットが解説する。(明鏡止水〜武のKAMIWAZA〜)