世界的大ベストセラー『星の王子さま』サンテグジュペリがパイロット体験を元に創作
『星の王子さま』は1943年にアメリカで出版。累計発売数8000万部以上の世界的な大ベストセラー作品。作者はフランス人作家サンテグジュペリ。航空郵便会社のパイロットとしての体験を元に創作した。
作者が込めた大人へのメッセージ(1)「子どもの心を忘れずに」
遠い星からやってきた王子は、砂漠に不時着したパイロットと出会う。彼は人と心を通わせることができず、仕事にも情熱を持てない寂しい男だった。そんな彼に王子さまは「ぼくにヒツジを描いてよ!」と頼んだ。
ヒツジではなく、王子が“木箱の絵”を気に入ったのはなぜ?
パイロットはヒツジのかわりに“木箱の絵”を描いた。王子はこれを気に入った。木箱にはヒツジが死なないように空気穴が空いており、そこにはやさしさがあった。王子が欲しかったのはこのやさしさだったのだ。
王子がヒツジを欲しがった理由はバオバブの木の芽を食べさせるため
王子は喜んで、ヒツジがバオバブを食べるか聞いた。実は王子の星はとても小さな星だった。バオバブが成長しすぎると星が破裂してしまうため、王子はバオバブの芽をヒツジに食べさせたかったのだ。
『星の王子さま』のバオバブの木が意味するものとは?
北九州市立大学・水本弘文名誉教授が解説。「自分が作り出すものなのに傷ついてしまう憎しみや嫉妬。“敵”として同じ人間を憎んだり軽蔑したりする。人間の心の危うさ、そういうものを語りたかったんだろう」
大人と子どもがうまくバランスをとることでいい人生が送れる
知らず知らずのうちに心をむしばむ邪悪なものを抜き取り、手入れすることで、子どもの心を守るべきだと作者は訴えた。「大人と子どもがうまく協働して、うまくバランスをとることでいい人生が送れる」と水本さん。
作者が込めた大人へのメッセージ(2)「本当の絆の作り方」
実は王子は自分の星に咲いたバラとの関係に悩んでいた。とても美しいがプライドが高く、バラのわがままに困り果てた王子はとうとう星を出ていく。「ごめんなさい。幸せになってね」バラもまた王子を愛していた。
王子とバラが仲違いした“本当の理由”は王子さまが表面にとらわれていたから
「ふたりの仲がうまくいかなかった原因はバラのわがままや高慢さにあるようですけれど、王子は表面にとらわれてしまっている。相手が何を望んでいるかを言葉だけでしかつかめない。見えないところが見えていない」
大人と子どもがうまくバランスをとることでいい人生が送れる
王子は地球の庭園でバラがありふれた花であることを知り、泣き崩れる。そしてキツネに「遊んでよ」と頼むが、断られる。「遊べない。飼いならされていないから」「飼いならすって?」「“絆をつくる”ってことさ」
「飼いならす」には“お互い変わる”という意味がある
「飼いならすとは、飼いならし合うこと。一方的に相手を変えるように見えて、影響を受けて自分も変わる。楽しいことや辛いこと、さまざま積み重なって中心に愛情があるから、あのバラは王子にとって大切な花になる」
作者が込めた大人へのメッセージ(3)「すべては心で変わる」
キツネは仲良くなった王子にある秘密を教えてくれた。「大事なことは目には見えないってことさ。忘れちゃいけないよ。飼いならした相手にはいつまでも責任がある。あんたはあんたのバラに責任があるんだ」
「大事なことは目には見えない」の真意とは?絆を結ぶと無責任ではいられない
「たとえば友だち、家族、好きな車。そういうものも私たちとの目に見えない関係を反映して大事なものになっている。相手と深い結びつきを持つと自分も相手も変わる。絆を結ぶ重さがあり、無責任ではいられない」
ヘビの毒で魂だけになって星へ帰ろうとする王子さま
王子がヘビに話しかける。「君のはいい毒だよね。僕を長く苦しませたりはしないよね」王子はヘビの毒で魂だけになってバラの元へ帰ろうとしたのだ。王子はパイロットに言った。「ぼくはぼくの花に責任があるんだ」
自分が愛する者のために生きると決めた王子さま
「王子は自分の中の一番大事なもの、バラへの思いだけになって星へ帰る。王子は愛する者のために生きることを自分の生き方として達成したい。愛するというのは私という概念に修正を迫るようなものすごい力がある」
戦争の中で消息を絶ったサンテグジュペリは、今も読者の心の中に生きている
第二次世界大戦でアメリカに亡命したサンテグジュペリは、フランスの家族や友人をドイツの占領から解放したいと願う。「星の王子さま」出版から一週間後、志願して偵察飛行部隊に入隊するが地中海で消息を絶つ。
【大人向け】「星の王子さま」アニメであらすじ解説_NHK公式
100分de名著
最近ちょっと元気がないや――そんなあなたに。“大事なことは目には見えない”でおなじみの世界的大ベストセラー「星の王子さま」。フランス人作家・サン=テグジュペリは子どもだけではなく、大人に向けてこの作品を書いた。“生きる上で最も大切なこととは何か”作者が込めた大人へのメッセージを15分でざっくりと解説。(100分de名著)