噴火を繰り返してきた富士山・17年ぶりにハザードマップ改定
その美しさで多くの人を魅了する富士山は、恐るべき火山でもある。2021年、17年ぶりに富士山噴火のハザードマップが改定された。過去の噴火を読み解く研究の進歩によって新たな科学的知見が得られたためだ。
宝永噴火に着目し、山梨県富士山科学研究所の調査に同行
注目すべきは江戸時代の宝永噴火(1707)。大量の噴出物が麓の村を焼き、火山灰が江戸にまで到達して甚大な被害をもたらした。特別な許可を得て、山梨県富士山科学研究所・馬場章研究員の調査に同行した。
宝永噴火で何が起きたかを知る鍵は噴火で誕生した宝永山
標高2380mの宝永火口周辺を覆っているのはスコリアという多孔質の火山噴出物。馬場さんが鍵と考えているのは火口の淵にある宝永山。当時の絵図にも描かれていて、噴火の際に出来たことがわかっている。
マグマの隆起で誕生したのが宝永山の定説だったが…
これまで宝永山は噴火活動に伴い、地下のマグマが突き上げた隆起で形成されたと考えられてきた。赤茶けた地層が宝永山の山頂部分だけで確認されるため、古い地層が露出していると考えられてきたのだ。
仮説・宝永山は火山灰が降り積もって出来たのではないか?
しかし馬場さんは現地調査を重ねる中である仮説にたどり着いた。「あの山自体が宝永噴火の噴出物が放出されて、偏西風によって東にたなびいて火山灰が降り積もったと想定したほうが合理的ではないかと考えています」
岩石の地磁気方位を測定することで1707年に噴出したものかどうか推定
馬場さんは新たなアプローチで宝永山を構成する石を分析。「岩石の地磁気方位などを測定することで1707年に噴出したものかどうか推定できます」。その結果、宝永山は噴出物が積み重なっていることが分かった。
ドローンの高精細映像で馬場さんの説を裏づけ
番組では上空から宝永山を4Kドローンの高精細映像で撮影。「宝永山の斜面にある赤茶けた地層は黒いスコリア層の中に連続していて、同時に出来上がったものだということが分かります」と静岡大学・小山真人教授。
宝永噴火の噴出量の多さも再確認
「今まで宝永山は隆起したものだろうと、わりと単純に考えていたんですが、ドローンを使って精密に分析することで堆積して出来た山だということが分かりました」。宝永噴火の噴出量の多さも再確認する結果となった。
富士山のハザードマップが17年ぶりに改定・噴火の歴史の新事実
サイエンスZERO
その美しさで多くの人を魅了する富士山。一方で過去5600年間におよそ180回も噴火を繰り返してきたおそるべき火山だ。今年17年ぶりに富士山噴火のハザードマップが改定された。背景にあるのは過去の噴火を読み解く研究の進歩。江戸時代の宝永噴火は噴出物が「山」を作り、麓の村を焼くほどの大噴火だったことが様々な調査から見えてきた。(サイエンスZERO)