東大名誉教授で宇宙物理学者の佐藤勝彦さんが解説・相対性理論はひとつの論文ではない
そもそも相対性理論って?「相対性理論というひとつの論文があるわけではない。複数の論文をまとめたものを相対性理論と言っている」と東京大学名誉教授で宇宙物理学者の佐藤勝彦さん。
光を題材にした「特殊相対性理論」と時間や空間の物理学である「一般相対性理論」
1905年に発表した「特殊相対性理論」は 光に関係した話。1916年に出た「一般相対性理論の基礎」は特殊相対性理論を内部に含みながら、より広く、強い重力の場や、時間と空間の物理学になっている。
光の謎を解明・動いている地球上で光を観測したらどうなる?
特殊相対性理論の最大の功績は「光の謎」を解明したこと。光は宇宙をどの方向にも同じ速度で進んでいる。一方地球は太陽を中心にして回っている。その動いている地球上で光を観測したらどうなるのか?
19世紀後半の実験では、どの方向から来る光も速度は同じ。その謎は説明できず
しかし19世紀後半に行われた実験では、どの方向から来る光も速度は一切変わらなかった。当時の人々はなぜそうなるのか理由が分からなかった。アインシュタインはその謎を説明する画期的な考え方を提案する。
アインシュタインの革命的な提案「時間は不変ではない。観測者の状態によって変わる」
時間の進み方は観測者の運動状態によって異なる。誰から見ても絶対だという固定観念を捨てることにしたのだ。「光速度不変を原理にすると、時間は決して不変ではないという。これは本当に革命的な考え方です」
相対性理論の前提は「光の速さはどんな状況でも変わらない」
「地球上より高速で動く宇宙船の中の方がゆっくり時間が流れている。これが相対性理論の基本」と佐藤さん。これをわかりやすく説明するには、「光の速さはどんな状況でも変わらない」という相対性理論の前提がある。
移動する宇宙船の中で地面から天井まで光を出すと、光は斜めに進んで見える
地球で地面から光が出て天井に届くまで、仮に1秒とする。同じようにとても速い速度で移動する宇宙船の中で地面から天井まで光を出して見てみよう。宇宙船は動いているので地球から見ると光は斜めに進んで見える。
地球上では1秒たっているのに、宇宙船では1秒たっていない
次に地球上と宇宙船上、2つの光を同時に出してみると、地球上では光が天井に届き1秒たっているのに、宇宙船ではまだ天井には届かず1秒たっていない。地球から見た宇宙船の中の1秒は地球上の1秒よりも長いのだ。
高速で飛ぶジェット機の中の時計は地上の時計よりわずかに遅れていたという実験結果も
相対性理論の基本は「高速で動いている物体の時間は止まっている物体の時間よりゆっくり進む」。アメリカの実験では高速で飛ぶジェット機の中の時計が地上の時計よりわずかに遅れていたという記録が残っている。
新幹線に100万年乗り続ければ1秒先の未来へ行ける!
つまり新幹線に乗って移動している人の方が移動せずに同じ場所に止まっている人より時間がゆっくり進むということ。「時速285kmの新幹線で停車せずに100万年乗り続ければ1秒先の未来へ行ける」と佐藤さん。
何百年も未来へ行くタイムマシンはいつできる?
ちょっと未来でなく、何百年も未来へ行くタイムマシンはいつできる?「とにかく未来へ行くためには、光の速さにものすごく近い高速の乗り物が必要。その技術ができるためには少なくとも100年では足りない」。
一般相対性理論とは「質量によって時間と空間はゆがむ」「重力の正体は時空のゆがみ」
一般相対性理論はアインシュタインが特殊相対性理論を10年かけて拡張したもの。高度な方程式で表されるが、端的に言うと「質量によって時間と空間はゆがむ」「重力の正体は時空のゆがみである」というもの。
まだ見つかっていない宇宙の現象を次々と予言した一般相対性理論
この一般相対性理論によってまだ見つかっていない宇宙の現象が次々と予言された。一つ目はブラックホールの存在。質量が非常に大きな星は一生を終えるときに大爆発を起こす。これを超新星爆発という。
予言1・光でさえも脱出できない領域=ブラックホールの発生
大爆発のあとには中性子星という密度の高い星ができるか、自らの重力に耐えられず収縮していく天体ができる。そして時空のゆがみがとてつもなく大きくなると光でさえも脱出できない領域=ブラックホールが発生する。
予言2・宇宙全体は膨張したり収縮したりする
予言の2つ目は宇宙の膨張。当時、そのことを示す観測はなかったが、一般相対性理論は宇宙全体が膨張したり収縮したりすることを予言した。これにはアインシュタインも驚き、一度は方程式の修正を試みたほどだった。
予言3・時空のゆがみを光速で伝える波=重力波の存在
3つ目は重力波の存在。重力波とは時空のゆがみを光速で伝える波。質量の大きな星が合体したときや超新星爆発が起きたときに大きな時空のゆがみが発生することが予言された。
アインシュタインの相対性理論の予言は、後にすべて裏づけられる
これらの現象は、その後の研究者たちによって実際に観測された。1929年、アメリカの天文学者によって宇宙の膨張が観測された。2015年、レーザー干渉計という最新鋭の装置で重力波がはじめて直接観測された。
相対性理論発表から100年、ようやく人類の技術がアインシュタインに追いついた
2019年には電波望遠鏡でブラックホールが初めて直接撮影された映像が公開された。アインシュタインの理論の発表から100年が経ち、人類はようやくアインシュタインの予言を裏づける技術を手にしつつあるのだ!
【相対性理論1概論編】NHK番組でマッシュアップ!
100分de名著 チコちゃんに叱られる ほか
難しくてどれだけ聞いてもよくわからない「相対性理論」。それがたった10分でざっくり分かっちゃう!。「チコちゃんに叱られる!」などNHKがこれまでに制作した、相対性理論についての分かりやすくて面白い番組・CG映像・資料映像をマッシュアップ(再構成)して、超タイパのいい動画ができました!これであなたも相対性理論を語れるようになるかも!?